ちゃぶ台

えんぞうです。書いた小説など

GBCのルックに慣れたって言ってる人が憎い……

『ガールズバンドクライ』、なんか案外みんな違和を感じてないっぽいので、供養です。まあ褒めは他がやるだろ。

まだ違和感あるんだけど、慣れたとか言ってる人マジ?表現を色々掘って回ってる俺を差し置いて?適性や個人差があるというのはそうだが、こういう、新しさとされるものが受け入れられない時にメチャメチャ悔しい。ということで、このルックをがんばって消化していきたい。いきます。

 

1.僕がCGアニメを考えるとき、出発点はいつもトイ・ストーリー的かどうか、というとこになります。一応トイ・ストーリーがどういうものか説明すると、おもちゃは生きていて、人間の目に見えていないところで動き回っているというアニメです。

 僕らの生きる現実ではもちろんおもちゃは生きていませんので、生命のないオブジェクトを表現するものとしてのCGという使い方はとってもクレバーです。

 そしてそこに、ディズニーお得意の秒間24コマフルアニメーションとして命を吹き込んでいるわけです。アンディに操られているときと、おもちゃたちが自ら動いているときで、おもちゃたちの内部に巡る力の有無がハッキリと見える。今まで活き活きと動いていたウッディは、人間の気配を察知すると途端に人形に戻り、糸が切れたように重力に引っ張られる。

 塊感、あるいは流動性、表面の質感、あと重さも? オブジェクトの性質がまずあって、それが運動している……流体を押しのけ、変形し、表面を光が流れ、慣性に引っ張られる。オブジェクトの質感が先行するアニメーションということなのかもしれません。

(手描きアニメも”設定”があるけど、結局、基本的には平面の絵だ。3DCGの3Dが持つ塊感というのは思ったよりも大きいのかも。あとアニメーションによって容易に変形する異常なまでの流動性がある。)

 

 日本においてフルコマ3DCGアニメと言えば、『MikuMikuDance(以下MMD)』というソフトウェアがあり、これは容易に3DCGアニメーションを作ることが出来るもので、個人製作の3DCGアニメが結構作られました。こちらはキャラクターを使ったお人形遊びという様子で、やはりオブジェクト先行のアニメーション感があります。

 余談ですが、MMDアニメといえば石舘光太郎作品ですね。プレスコ――声優の演技に合わせて3DCGでアニメーションを付けていくというやり方がとられていて、中の人の身体とキャラクターをリンクさせているという点でオブジェクト先行と見ることが出来るかもしれません。マジで余談だな。

 

2.一方で、近年力を増してきたセルルックCGアニメは、言ってしまえば3DCGの画材としての活用という印象です。ゴリゴリに私見です。

 線の存在感、コミカルなフェイシャルアニメーションやエフェクトなど、よりイラストに近いルックの作りになっています。例えばスパイダーバースにみる多種多様な表現を統合したひとつの大きなルックの迫力、そのコンポジットパワーは、セルルックの……というかデジタル制作の利点を生かしていると思われます。

 日本の作品の話をしましょう……もちろん、『GUILTY GEAR』の話です。

 CGの歴史とはゲームの歴史といっても過言、かもしれないけど、俺はあんまりくわしくないけど、まあやっぱゲームがメインフィールドでしょう。『GUILTY GEAR Xrd -SIGN-』が3Dのトゥーンシェーディングを導入したモチベーションとしては、3Dならではの立体的でダイナミックな表現、従来のドット絵では解像度の問題で描画できなかった表情の豊かなアニメーションを挙げています。

www.4gamer.net

 詳しくは上とかを読んで欲しいんですが、例えば線の太さが出す幼さのニュアンスを、遠近それぞれで3Dモデル作ることで工夫していたりと、絵としての印象を重視しています。

 さっきのオブジェクト先行に対し、これらはイラスト・アニメーション先行と言うことにします。共通する工夫として、フレーム数をわざと落として馴染ませたりしているらしい。リミテッド風の強弱をつけている?のかな。ポーズの良さを手掛かりに作り込んでいこう、というような意識?

 アニメ作品でもモチベーションは似たようなものなのでしょうが、3DCGのキャラを操作していたらシームレスにセルルックなアニメーションが展開するという体験があるゲームと比べ、2Dアニメーションに近づこうとすることで質的な向上を目指すアニメ作品では、当然超えることは難しい。『D4DJ』も、フェイシャルアニメーション等の賑やかさには強いインパクトがありましたが、成熟していないこれらの方が面白く、結局手描きで良いじゃんとなってしまいそうなのがつらいところ……

 

 

3.では、『ガールズバンドクライ』はどっちよりなんでしょうか。

 打ち出している特徴として①フルアニメーション、②イラストルックCGがありますが、印象としてはセルルックのようなアニメーション先行的なルックというよりは、オブジェクト先行なのではないか、と思います。

 ただ、アニメーション先行的な側面……イラスト・アニメーション的な動きが可能なオブジェクト、イラストルックCGを使ってのアニメーションなのかもしれない。ここ、初報から今まで融和はしていないと思ってるのだけど、ルックの受け入れられ方の広さを見るに両者にそこまで反発はないのかも。

 イラストルックとフルコマの不和について。4話には演技シーンがありますが、こちらも普段のアニメーションの作り(加速の付け方や振りの大仰さ)と比べてあまり差があるように作られておらず、全体的に舞台っぽい芝居付けがあります。

 イラストルックなCGをそのように大仰に動かす外の力を身体や表情にも感じます。「外力が」というのが曲者で、どうにもお人形感が抜けません。生き生きと”動かされている”。テーマとしても、内から湧き上がり外へ向かうもの、ナマの衝動、について語られていると思うんですが、しかしアニメーションはそうではない。

 キーワードとして「矛盾」があるように見えますが、オブジェクトとアニメーションの二つの引っ張りあいがあることで何か語られるものがあるのでしょうか? 今後に期待。

 

4.新しいのか。

 結構考えましたが、「イラストルックCG×フルコマ」という提案はメチャクチャいい気がしてきました。オブジェクトとしてアニメ的なイラストを考えようというのは良い。一部アニメーターの間で言われている「絵が動くわけねーだろ」という文句に対する何か答えになるのかもしれない。

 ただ、ブレイクスルーというにはやはり先行例はあるような気がする。具体例を挙げるとすると『RWBY』……というか、MMD作品群の存在でしょうか。シンプルにそれらをリッチにしたものだというのが第一印象でした。

 ちょっと違うかもなんですが、『トライガン スタンピード』も結構近い。和氣監督は「(1カット1アクションの通例に縛られず)1カットで長いシーンが作れるのが長所」と仰っていて、被写体ーカメラとしての意識が強く出た映像になっているのかなと。またその一方で、日本の作画アニメ的なコマ数を落とした表現や、アニメ的なリップシンクの調整やコミカルなフェイシャルの成立にも気を配っていて、オブジェクト/アニメーションの両立があるように思われます。

www.famitsu.com

cgworld.jp

 

5.さいごに

 3Dアニメ史に詳しい人だれか解説してくれ~!

 ぜんぜん消化できてません。なんか「生っぽさ」とか言われてるけど「生っぽさ」てなんでしょうか。なめらかさ?

 ただまあ、実際難しいことやっているのは確かなんですよね。全然評価したいけど、アニメである以上アニメーションで語れやという部分もあり、なんかそこに不和ある状態キモくない?みたいなのがあります。

 さっきも書いたけど。その不和でこそ語られている部分があんのや、みたいな、そういうのがあれば嬉しいですね。OP↓にもマリオネット描いてるんで。

 てかOPは作画なのなんなんだ……

 

 以上。