ちゃぶ台

えんぞうです。書いた小説など

アニメ2021

「アニメ全部観る」って言葉がインターネットには転がっていて、全部? 観てるんだろうか本当に。と思うなどした1年だった。何をしたかというと、アニメを全部観ようとした。

数えあげてみればTVアニメを286本、アニメ映画を42本観たので結構頑張った1年だった。これは過去作も入っているけど今年の新作は大体観たと思う。少なくとも観ていない方を数えた方が圧倒的に早い。ここに加えて配信限定アニメだったりアニメMVアニメCMだったりを観たのだから本当にアニメ漬けの1年だった。

いつの頃からかアニメから台詞を頂戴して毎週Twitterアカウント名を変えたりするようになっていた。1週間以上変えずにアニメの台詞を着ていると饐えた匂いがするようになる。次を見繕うために早くアニメを観なければと焦る。

「アニメをみるのが下手なりにとにかく数を観よう」としたのが動機だった気がする。気がする、と言ったのは日々の時間の多くをアニメに割き、アニメを思い、万物をアニメに例え、自我のほとんどをアニメに預けた暮らしをしていており、今この私というものの輪郭はぼんやりと定まらず何を思ってアニメを観ているのか分からないからです。これ、この文章はいまアニメが私を通して書いています。

規則正しい生活習慣と健康、そして研究の進捗が失われましたが、面白いアニメは面白かったしなによりものすごく気持ちよくなれたので観てよかったなとは思った。このままこの快感までもが失われることが惜しいので、いくつか思い出を残しておきたいと思う。ネタバレをします。

 

アイドルランドプリパラ OP「OPEN DREAM LAND!」(追記)

本編の1話と0話も無料公開されていて、おかえりと言いたくなるようなプリパラ感に泣きそうになってしまった。プリパラが人々の記憶から消え去ってしまった世界という設定も、今この時代に観るから感じるものもあってよい。現実と切り離された時空の中で、アップデートに失敗したプリパラはあの頃と変わらず存在している。

と、そんなことよりアイドルランド上空に封印されている夢川ゆいがどうしても気になってしまう。夢川ゆいが持つその莫大な夢パワーゆえに現実世界へのゲートを維持するための柱となってしまうとは……。

 

本編の話ではありませんでした。OPアニメがめちゃくちゃよい、という話です。

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コンテ演出吉原達矢の、今までのプリパラでは見なかったそれっぽい煙や爆発があってカッコいい。一方でキャラクター紹介のところなどはしっかりプリパラ感を残しているのはさすがだなと思った。58秒あたりからのソラミスマイルとドレッシングパフェの、ライブパフォーマンスを切り取ったカットはうっとりするほどリッチでよい(東堂シオンの顔はどの角度から見ても美しい!)。

65秒~あまりとらぁらのスカイダイビングからのカットひとつひとつが、そして次のカットへの変化がめっちゃダイナミックで良い。タイトルロゴが出るタイミングが完璧。いいアニメOPっていうのはタイトルロゴを出すタイミングを分かっているんだよな。

二人が地面に降り立った後には今後のストーリーを示唆するようなイメージを詰め込んできていて、情報の疎密のコントロールも良いと思った。

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巨大な女の子が泣いている手前で森を進むアロマゲドンの二人。どういうシーンなのかとても気になる。

というめちゃめちゃ素晴らしいOPなので初回どのタイミングで流れるんだろうと楽しみにしていたんだけど、1話でも0話でも使われなかった。2話の無料公開は3月らしいです。

 

他、OPとか

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タイトルロゴを出すタイミングが完璧なOPその2。全部いいんだけど57秒の線路からのグオ~って行くところからパッと静かにタイトルを映すところが特にいい。

 

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エモい青春映像オブザイヤー。色がいいですね……50秒からの古見さんが教室から出ていく~階段を駆け上がっていくところの映像的に動き出すところがお気に入り。あと星作ってるピースが一つだけ震えているところ。

 

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こちらの期待を超えてきてよかった。タイトル→サブタイトルを出すとこで一気に掴んでくるので良いのだが、YouTubeの動画では反映されてないので悲しい。

 

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復活の京アニTVシリーズ。トールとエルマのラップパートがたまらんすぎ。

 

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『大王饶命』OP。金色の使い方のセンスが良くてめっちゃゴージャス。

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ここ豪華さも派手さもやり過ぎで笑っちゃった

まだまだよかったのあるのでOPだけをまとめるやつやった方がいいなと思った。

 

Artiswitch

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あんまりにも話題に上らないので見逃しそうになってしまった。配信限定だとネットフリックスのArcaneが元気でよかったけど、YouTubeで公開されていて敷居の低いこちらも負けず劣らず良いのでドシドシ流行ってほしい……。

深夜アニメ視聴者にとって原宿はそこまで遠い場所ではない気がする。ここでいう近さとは自らそこに行けるかどうかという話ではなくて、原宿を舞台としたアニメに触れたことがある程度の親しみでよい。ちなみに自分がこの前原宿いったら人多すぎて鬱になりそうでした。

ともかく、原宿のカルチャーとアニメの相性は実際いい。画面が華やかになるし、奇抜に見えるアイテムの組み合わせだって自由自在だ。

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るるの生き辛さを象徴するようなファラリスの雄牛だって、ほらkawaii。(4話)

アニメのようなビジュアルを扱えるというのは原宿を舞台にした作品の強みで、段々と現実離れしたイメージの濃度が増し、やがて裏の世界へ、という誘導が短い尺で可能になる。そこに楽曲の力を借りたMVパートも加わって……とにかく濃密な10分に仕上がっていてよい。

特に気に入っているのは4話。身の回りのあらゆるものを好き、嫌いで分別していく〈るる〉のどうしようもない生き辛さ。その自分らしさを突き詰めた先の行き止まりが描かれた異色回。独裁スイッチを使うことでしか救われない人もいる、みたいな話をやっていて、最後るるが笑顔で傘を閉じることで自分自身すら閉じていく徹底ぶりは酷薄だが美しい。

 

EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション

これをシリーズの締めくくりに持ってくるのは狂人だろ、と思った。シンエバ無難すぎワロタになってしまったのも非常に困った。

下はめっちゃ困惑した気持ちにどうにか整理をつけるために書いたやつです。

o-zo.hatenablog.com

エウレカの声にウルスラグナが応えるかのように、ディスプレイに「GO」と表示されるあそこが大好きで~……

 

劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト

本気の本当に今年一番面白かったアニメって何って、まず思いつくのがこれ。これがあったせいで劇場アニメも全部(全部ではない)観る羽目になったのだから罪深い。オタクたちみんなみて語ってたから今更語ることなんてないんだけど。

TV版ってこんなに面白かったっけ? って観返したりしたのだけれどやっぱりTV版より断然よい。俺がスタァライトで一番好きなのは舞台装置なんですが、塔も線路も電車も、あらゆるイメージが繋がって、愛城華恋を乗せて上っていく、あの瞬間を求めてスーパースタァスペクタクルを何度も再生する人になってしまった。タワーでポジションゼロというアイディアはあまりにも質量がデカすぎるし、それが全身を貫く衝撃と、その穴を彼女たちに吹く風が通り抜ける……絶頂。あまりにも気持ちの良い映像。2021年いろんなコンテンツの終わりを観たけど、これをクライマックスに持ってこれたスタァライトが一等賞だと思った。

 

シキザクラ4話「家族/BROTHER」

僕がアニメを作るとしたら絶対やりたいことがあって、それが「30分ずっとカレーを作ってるだけの回」なんですが、このシキザクラ4話は伊勢うどんを煮込んで終わる回でかなり思想が近かった。

これまで3DCGでバリバリのかっちょいいアクションでやってきたアニメが急に作画でやるというサプライズも驚いたけど、やっぱり気になったのはこの構成だった。

伊勢うどんは1時間煮る!」「これだけ時間かけたうどん、絶対うまい!」

でタイマーで1時間測りながら伊勢うどんを煮る男二人、バカなんだよな。で、このぐつぐつ煮込んでる鍋をはさんで兄弟と思い出話をする。美しすぎる……。

ラストの台詞を書き出しておくのでこの美しさの一片でも持ち帰ってください。

吉平「さあ、煮えたぜ俺たちのうどんが」

~3分クッキングのテーマっぽい曲~

吉平「極太の面に甘辛のだしをかけて」

翔「タレ買ってきたの?」

吉平「作ったさ!」 

翔「ほお~」

吉平「ネギおねがいしゃ~す」 

翔「あいよっ!」

吉平「か~んせ~い!」 

翔「おお~! って太くない!? これ正しい状態なの?」

吉平「これが伊勢うどんなんだよ。これだけ時間かけたうどん、絶対うまい!」

「「いっただっきま~す!」」

~うどんをすする音~

「「マッズ~……」」

 

「自分だけの物語を描こう(保育士篇)」帝京平成大学 WebCM(追記2)

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企業CMでもアニメをよく見るようになりましたね。そんな中でも特によかったのは帝京平成大学のCMでした。走ってるとこのアニメーションが上手くいってて~とかではなくて多分

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こことか

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ここの、いかにもアニメアニメしい表現に弱点突かれたんだろうなと思います。曲のテンポとハマってて気持ちいいし、MVとしての満足感がある……女の子が可愛いというのも勿論ある……。

 

他、企業CMとか

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企業CMといったらもう三幸製菓ですよ。と言い張りたかったんだけど帝京平成大学CMが良過ぎたのでこっちを他に回すことになりました。周りが新海風のエモいアニメでプロモーションしてる中、三幸製菓は深夜アニメみてーなノリをずっとやってて好き。

 

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堀口由紀子はズルだろ~……と思ったら原画には小島崇史榎戸駿大久保俊介吉邊尚希田中宏紀錚々たるメンバーがそろっていて卒倒した。内容はあんまり分からなかった。

 

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最強のコンテンツ。

 

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背中の曲がり方にこだわりを感じる。

 

スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 6話「リヴァイアサンが来た」

単話で一番いいのを選ぶとしたらこれかなあ、気持ち良すぎて気を失いそうだった。撮影処理もってエモ~にするのが昨今の流行だと勝手に思ってるけど、細かい芝居付けやレイアウトがずっとパーフェクトだった。細かい部分はアニメに詳しいいろんな人が語ってるから今更おれが言えることなどないが、寝室~翌朝目が覚めるとこまでなんかは額に入れて飾りたいくらい好き。ロザリーの幽霊という設定を、あのバルコニーの1カットであそこまで面白くみせれるんだ、と感動した気持ちは今も鮮明に思い出せる。この色褪せないたった1カットが今の俺を生かすんだ。こういう出会いを得るためにもアニメは全部観た方がいいな。

 

セブンナイツ レボリューション-英雄の継承者-5話「跳梁-ピュシス-」

吸血鬼アニメが熱い今年にあっても素晴らしい吸血鬼アニメだった。

ところで「私、主体性のない女ですから」が口癖の女ってどう思います? ちょっと最悪ですよね。こんな女が、吸血鬼に血を与え、百合をやる。「だってあなたが欲しているんだから」とでも言うように……!(この口癖に隠された真意もとてもいい)

対して吸血鬼の方は「もうあなた無しでは生きていられない」みたいな態度で、だから舐められるんだよ。人に血をもらわなければ生きていけない生物、愛おしすぎる……。

アクションパート、吸血鬼の身体能力に任せたダイナミックな動きも良く、Cパートの艶のある吸血(未遂)シーンも素晴らしい。アニメを全部観ていたおかげで見逃さずに済んだぜ。大満足の1話です。

 

装甲娘戦機

TVシリーズで今年一番(この一番は本当の一番です)面白かったのがこれ。

今日から私はスナイパー……!? 日常を奪われ、その肢体に〝LBXユニット〟と呼ばれる戦術兵器を纏う5人の少女―― 〝装甲娘〟たち。選ばれし転移者である少女たちの使命は、多元世界をまたいで蝕み増殖し続ける金属生命体・ミメシスの掃討と殲滅。時空を超えて強いられた傭兵暮らし、それは世界の「希望」と「絶望」とを垣間見る命がけの修学旅行だった!

あらすじがまあ~よくあるやつだが順当に面白そう(おれはロードムービーが好きなので)だね、という第一印象を軽々飛び越えてきた。

全部の話数面白いのだけど、5話の京都回などは分かりやすく良い。メンバーそれぞれの世界にある京都は少しずつ違っている、という話の中で語られる銀箔張りの銀閣が、金色の金閣とともに蟹のような化け物となって登場、さらには銅閣までもやってくるという馬鹿馬鹿しいことこの上ない映像が映し出されるのだが、状況としては絶望的なのだから情緒がめちゃくちゃになる。実際焼け野原になりシンボルが怪物化しているという画は中々に恐ろしいものであり、「実際の聖地で物語を展開しリアリティを出す」のではなく「我々の世界との差異を強調することで説得力を出す」という使い方もいいアイディアだったように思う。

10話の総集編もTVアニメ総集編史に残すべき見事な出来だった。これまでの旅を振り返りながら、命がけの「修学旅行」を楽しむ彼女たちを見守る大人たちを見守ることで作品コンセプトを浮き彫りにさせるこの話は、なるほど総集編という形がピッタリだった。この構成の妙は総集編まで全部観なければ分からなかっただろうな……。

 

高野交差点(追記2)

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個人制作はそんなに漁れてないんですけど、やっぱりこれは印象に残りました。

三人それぞれの背景を描き切らない余白の感じさせ方は、情報量のコントロールがめちゃめちゃうまく、ピアス君は何にイライラしてたんだろうというところに自然と意識がむきます。ここに「この交差点で一連の出来事を見ている私たち」があって、という構造もいい。

ブレを強く残す速さの表現が面白かったです。速い動きをブレ指す表現はアニメでは珍しくはないんですが、これは遅い動きとのシャッタースピードの差を極端にすることで各々の速さが特徴づけられているような印象があります。このそれぞれ異なる速さの人物たちがある一点で交差する、というのがとてもいいですよね。

 

他、個人製作アニメ

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青春の一頁、にも満たない瑞々しい一瞬を詰め込んだ30秒。インディーアニメの名手(?)たなかまさあき(@shadyxx24)さんは今年も新作MVを発表していてそっちもめちゃめちゃ良い。

 

月とライカと吸血姫

吸血鬼に振り回された1年の締めくくりにみた激・オモシロ・吸血鬼アニメ。2021秋は他にも『ヴィジュアルプリズン』『吸血鬼すぐ死ぬ』の2作品の吸血鬼アニメがあり、そしてどちらも抜群に面白い。同じ吸血鬼を扱っておきながらネタ被りしないというのは驚きだが、この月とライカと吸血姫の吸血鬼という存在の扱い方というのは今年にあった吸血鬼アニメと比べてもかなり興味深かったと思う。

「吸血鬼→棺桶→ロケットの密閉性」と我々が吸血鬼に持っているイメージを宇宙技術へと上手に繋げている一方で、この「虚構的存在の吸血鬼ってこういうもの」というイメージからさらに、人と似た姿であり、そして人と何ら変わりない吸血鬼への差別意識を引っ張っていくのが秀逸。吸血鬼というレッテルを張られたイリナ・ルミネスクという少女の真実は、レフ・レプスやアーニャ・シモニャンとの交流によって明かされるのだが、このアニメの主軸となる個と個の描写がアニメ的にとても美味しいのがすごい。アニメ的に美味しいというのは、萌えということです。

作品を通してあった「虚構と真実」というテーマもとてもホットでよかった。いや、2021年で流行ったのは正しくは「虚構と現実」だろうけど、本作が扱っているのは私たちの歴史にあった宇宙開発競争、そしてその先にある新世界の話であり、私たちの住む現実の話をしていたのは間違いない。現実の中に溢れる虚飾、その下にある真実について。

まず記憶にあがる印象的な回は7話「リコリスの料理ショー」。イリナが宇宙に行くという一つの大きな山場だったが、視聴者がその天辺まで登れるようしっかりと組み上げられた良演出回だ。くるくると回転する宇宙船(ここの回転がアニメとして見栄えするような演出の”嘘”というのがまたニクい)の中でボルシチのレシピを読み上げるシーンは2021秋クール必見のシーン。打ち上げ成功に喜ぶのもつかの間、大気圏突入からクライマックスまでは息継ぎする暇もないがそこに忙しさはなく、宇宙飛行の緊張を描き切っている。

劇伴がとにかくいい。最終話「新世界へ」のレフくんの告白演説で、レフからイリナへ、イリナからレフへ、動き出すそれぞれの思いを乗せながら流れるジャズは、アーニャのロケット頭突きという衝撃のカットをぶつけられても負けない力強さがあった。

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信じられないことに、これに負けない劇伴が存在する。(12話)

あとEDがめちゃくちゃいい。監督の個人的な思い出から寒い夜を走るサイドカーに乗る二人というイメージが出来上がったようです。イリナからレフくんへ託す視線の温もりと、その先にある星空。最も効果的に回り込みを使ったアニメーションの一つ。

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デジモンアドベンチャー:54話「さすらいの戦鬼リベリモン」(追記2)

作画回です。この回だけ(というと言い過ぎですが)年話候補に挙がったほど突出して出来が良く、それだけに話題に上らないのがちょっと寂しいので紹介します。

よく動かすというより、カッコよく動かす。原画に館直樹、星川信芳、志田直俊など、かっちょいいアクションを知っている作画で力いっぱい暴れるデジモンが観れていいです。序盤の多対一、後半の一対一でアクションの味が変わるのも嬉しい。

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太一とアグモンの絆と、リベリモンの孤独

こういう気の利いた構図が多いのも印象的で、台詞よりも画で語るスタイルもたまらない。

 

トロピカル~ジュ!プリキュア

マジのガチで面白かったアニメはと言われたらこれ。マジで全部おもろい。トロプリがなかったらいま生きてないよ、トロプリ視聴は生存戦略です。

毎話愉快に、みたいな方向性なのかな。私が観てきたいくつかのプリキュア作品と比較するととにかく遊びに溢れていてめちゃくちゃ楽しい。南国=陽気という安直さ(というと失礼かもしれないが)を大真面目に仕立てたその出来はなるほどトロピカっている。それでいてきちんと縦軸のストーリーも編み込まれていて、いわゆる泣き/エモ要素も十分というなんとも美味しい作りだ。何をおいても優先して全部観ておいてよかった……。

いやとにかく女王たらんとするローラ・アポロド―ロス・ヒュギーヌス・ラメールさんがいいキャラすぎるんだよな。2021年主演女優賞はローラさんだよ。俺は気高くて高潔で欲張りなキャラクターが大好き。マーメイドアクアポッドが欲しい。

単話で、となるとやはり作画演出がありえんくらい良い29話がよく挙げられる気がするのであえて他の回を。

第37話はローラとまなつの幼いころの記憶に触れる回だ。一部では猿やなんやと言われているまなつにあんな過去が……というエモ伏線回収が~みたいな話はさておき、伝説の29話では作画監督を担当された森佳祐氏(おそらく?)パートの幼いローラの動きがとにかくいい。

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人魚の経験がないと描けないとまで言わしめるカット

脚を手に入れてから人魚の姿で動き回ることが減ったけど、やっぱり最初の頃の「人魚であることがばれたらマズい!」のドタバタコメディも楽しかった……校内放送にスペシャルゲストとして登場し人魚の美しい歌を披露する13話、保育園の先生として人間の子供たちと触れ合う14話などは特にローラさんが輝いていて好き。

 

パウ・パトロール ザ・ムービー(追記2)

TV版も楽しく観ているんですけど、でもこの「たのしく」はパウパトロールの繰りだすパワフルな描写に否が応でもテンションが上がってしまったところから出てくる感情なんですよ。山の上に氷海があってそこにペンギンが生息していたり、落下する人工衛星を巨大なトランポリンで撥ね返したり。お話もクソ迷惑な住民たちの尻拭いをボランティアでやってる小学生と犬たちが知恵と勇気で頑張るって感じなので素直に気持ちよくなれないこともあり……というのもあってあんまり劇場版の内容に期待はしていなくて、僕がこの映画を観にいった一番の理由は「CGがやたら豪華になってる!」というものでした。

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これが(TV版)

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これになる(ザ・ムービー)

ところがですよ。いざ観にいってみたらあのまじめで、かしこくて、とっても頼りになるチェイスくん(子犬、ジャーマンシェパード)が都会に怯えているんです。そこで「これは大変な映画だぞ」と姿勢を正すと、実はチェイスくんは街で捨てられた子犬で、だから都会が怖いんだといことが明かされる。身が竦んで、レスキューの時も普段の実力が発揮できないでいる彼は、自身のパウパトロールとしての資格を疑い始めます。

主人公ケントの役どころも非常に良く、TV版ではパウフェクトになんでも解決する彼が、チェイスくんのことで一緒に悩んでいて、人間らしさがある。彼らの結びつきをTV版以上に身近に感じることができました。

あと忘れちゃいけないのがタワーからのビーグル発進シーン。あの数分間は確実にアイアンマンを超えた。

 

ぶらどらぶ

狂ったように観た。だって狂ったように放送してたから。

千葉テレビが夏休みアニメスペシャルと称して平日の0時半に『ぶらどらぶ』を放送、しかも1周するだけに止まらず4周する(TOKYO MXでの1クール+一挙放送を含めれば6周することになる)というのだから正気の沙汰ではなかった。某武士道社が某バンドアニメを狂ったように再放送している様を冷ややかに見ている僕も、ここまで狂ったことをされてしまうと負けを認めざるを得ない。

ぶらどらぶはそもそも2021年アニメではない(2021年冬配信開始、1話のみ2020年12月先行配信でした)。夏のTV放送が始まるまでに1話から6話まではすでに観ていたし、1話に至っては本放送が始まるまでにYouTubeでの1話先行配信やら何やらで8回くらい観てしまった。配信で観ていた時よりものめり込んでいることを考えるとぶらどらぶはTV放送が最も適していたということは間違いなくて、上にも書いたようにとにかく狂ったように観たものだから2021年のアニメ生活を思い出すうえで外せない一作になってしまった。

あとOPがバチバチに良い。


www.youtube.com

ウ~ンよすぎるOPだ……多分最近では一番再生したOPだった気がする。

 

ぶらどらぶは「渇き」が良く演出されたアニメだった。セルフパロに飽き足らず映画のうんちくまで語ってしまうのも他作品の血で生きる吸血鬼……ということなのだろうか。うる星やつらのような古くさいノリもリビングデッドという側面を象徴するかのようだ。とにかく監督が好き放題バカバカしいことをやるというのが好感触だったし、僕に8周させるほどの渇きを覚えさせたのも事実だ。

好きな回はまず2話「愛の夜間飛行」。べろべろに酔っぱらったマイの血ぃがS.O.S歌唱からメリーポピンズ(おれはメリーポピンズが大好き)よろしく蝙蝠傘で優雅にそして豪勢に夜間飛行するシーンがお気に入り。

6話「悪魔の城ドラキュラ」は作画的な見所に溢れていて楽しい回だ。蜷川姓を襲名した仁子が度を越した熱でズバズバ突っ込んでいく練習パートはぶらどらぶの思い出を語るうえでは外せない。

そしてやはり12話「インタビュー・ウィズ・マイ」。これまでのバカバカしい遊びがここまで美しく畳めるのだという部分に押井守のすごさを思ってしまうね。これまで多用してきた小窓ワイプの使い方など演出的にも光る部分が多い。あと血ぃがS.O.Sで〆るのがニクい。早く音源を出して下さいってずっと言ってるけどなかなか出ないな、なんで?

 

BLUE REFLECTION RAY/澪

1期OPが好き過ぎる!

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このキャラ原案岸田メル岸田メル感を多分に残した画面にビビってたら、現実の社会問題を交え苦悩する少女たちを鮮やかすぎるほど鮮やかに描きだしたので完全に参ってしまった。自分がしっかり向き合えているかどうかは分からないけど、2021年を象徴するTVアニメの一作だったと思う。

いろいろな悪いインターネット描写に触れてきた一年だったから、五話「何も見えないわたし」は折に触れて思い出してしまう。あまりにもインターネットは悪!で終わってしまう作品が多すぎる。それを踏まえて何ができるのだろうということまで考えるべきだろ、2021年だぞ。という思いにしっかり答えてくれた素晴らしい回だった。これ観なければ竜そばを観てインターネットに絶望したままだったかもしれない。アニメは全部観た方がいい。

 

POKÉTOON「ゲンガーになっちゃった!?」

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スタジオコロリド、いま一番今後が楽しみなスタジオなんだよな。

ここが作るポケモンのショートアニメはどれも良い。「ゲンガーになっちゃった!?」は渡辺暁子のキャラデザがまず良くて、モチモチ動く小学生やゴーストタイプのポケモンたちはどこをとってもかわいい。加えて背景美術、3Dの質感とも噛み合っていて、自身の強みを完全に分かった映像を作っている……と圧倒されてしまった。

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かわいい

 

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人間もかわいい(井口裕香、偉大!)

CMやらショートアニメやらとまだ短いものが多いけど、ペンギン・ハイウェイも良かったし長編オリジナルで一発かまして欲しい。2022年には「雨を告げる漂流団地」が配信/公開予定なのでとっても楽しみ。

 

あと、ポケモンのショートアニメではこれもびっくりした。

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脚本、北野勇作

かわいくて愉快な世界で、読んだ時の音も良い文章を書く方なのでアニメ向きではあるんだけど、実際観てみるとかなり良かったからもっと欲しくなっちゃった。

どろんころんども実はアニメーションになってる。

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監督の小林治さんが亡くなられたのが去年だった。

 

「魔法の歌」PEOPLE 1

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2021年で一番良かったアニメMV。最近気づいたんだけど多分俺長回しにめちゃくちゃ弱い。映っているのは主人公ひとり、背景は水色1色、そこに歌詞が入ったりするというシンプルな映像。

拾う動きとカメラの選択がいいのは勿論なんだけど、感情の決壊寸前の表現、主線に変化つけて感情乗せてるところもすごい。

 

女神寮の寮母くん。(追記)

2021年で一番「アニメ全部観る」をやっておいて良かったと実感したくらい視聴前との差が大きかったアニメ。選んで観てたら1話も観ずに切っちゃっていたと思う。

OPがいいんだけどYouTubeには公式コスプレイヤー(??)のMVしかない。曲がいいからいいんだけどさ……。

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貧乏中学生の南雲孝士君が火事で家を失ってさまよっていたところ大学の女子寮に拾われ、寮母として働きながら美人女子大生とのお色気たっぷり同居生活を送るという内容。視聴前の印象ではどう考えてもインスタントな量産型お色気アニメ、俺が楽しんでみるものではない……のだけど、画面がとても上手く練られていて面白かった。

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キャラクター達が各々の反応を見せ、各々のタイミングで立つ(2話)

えっちなシーンというのはそれだけでパワーがあるのだけど、女神寮はそのエッチさに甘えず「同居生活」をこういう芝居レベルで描いていて非常に好感が持てた。画面外のことを考えた設計があり、それが分かりやすく伝わるよう作られている。

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個人が集まっての同居生活。部屋や扉の使い方が上手い。(10話)

ちゃんとエッチなシーンはエッチだし、女子大生たちも(モブを含めて)個性的で狂ったキャラクター達ばかりそろっていたのもものすごく楽しかったアニメだ。

 

やくならマグカップも(追記2)

30分のうち前半15分がアニメパート、後半が実写声優バラエティパートという構成に放送初期までは構えていたところがあったんですが、一期後半がらグングン良くなってって、一期最終回などは今年一番良かったTVアニメです。一番いいアニメはいくつあってもいいですからね。

舞台は美濃焼で有名な岐阜県多治見市。陶芸に夢中な4人の女子高生たちが、土をこねながら自分たちそれぞれの形を見つけ、少しずつ成長していく「ゆるふわ陶芸ストーリー」。まちを挙げての全面的な協力もあって土地に根付いている物語、キャラクターを感じることが出来る、”生きたアニメ”になっていると感じました。

やくも、「時間に対する感覚」が異常に良かったです。季節や時間帯といった"いつ"の表現もそうなんですけど、キャラクターの運動そのものに流れている時間の描写が特に上手い。彼女たちがそこに存在しているという説得力と、相互に響き合っているその瞬間を確かに切り取ることができる感性。

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姫乃ちゃんが四つん這いになって上手から下手へ移動するここに、15分のうちの10秒も割く。

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夕日の中縁石の上を歩く2人。下校時間そのものを画面に持ってきている。

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曇った窓ガラスと車内の明かりの色味で冬の細かいニュアンスまで描写

フィルムに流れてる豊かな時間を感じられるとキャラクターの変化や成長も鮮明になるし、回を経るごとに積み重ねてきた時間が乗っかってくるので強いですね。

 

遊戯王SEVENS

ずっとやってるから2021年のアニメでもないけど、ちゃんと2021年も面白かったので描いておく。なんでこれ(観測範囲内で)視聴者が少ないんだろう……と毎週思ってしまうくらい面白い。トンチキアニメの部類に入ると思うけど、たまに入れ込んでくるSFっぽい遊びにも存在感があってよい。

52話『最後のラッシュデュエル』は第一部最終回なのだが、子供たちがラッシュデュエルという遊びを守るために月に巨大ロボを建造する、なんていうエモいSFがやりそうなことをやっていてエモい。

「子供たちが自分たちのルールで、自分たちの世界を作って遊ぶ」ということを少年向けアニメでやるということの偉大さをもっと分かってほしい。それでいてしっかり面白いのだから完璧なんよ。アニメ全部観た方がいいよ。

このアニメの好ましい部分の一つなんですが、一発ネタで雑に作ったように見えるキャラクターがその後も割と頻繁に活躍の場が与えられ、しっかりその後も生きていると思わせてくれます。見た目は子供だけどばりばりの主婦というノリで生まれたとしか思えない足立ミミはほぼ準レギュラーとしての地位を獲得していて、現在は主人公たち小学生の作る未来を同じ目線の高さで見守るという唯一無二の味わいを持ったキャラクターになっている。

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左から小学生、小学生、小学生、そして本厄37歳を数える一児の母足立ミミ

 

「Unison」hololive/宝鐘マリン(追記2)

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歌うVが増えてきている+アニメMVが増えてきているという流れがあってのVtuberのアニメMV。すでに珍しいものではなくて、特にホロライブはその企業力でヤバPVを作ったりしている。

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監督コンテ演出榎戸駿のオルタナティブPV、あの超大型コンテンツFG〇レベルなんよね。パワー。

でも取り上げるのは船長のMVです。時代を象徴しているのはこちらのような気がするから……。

 

船長が画面に映ってない時間が1秒以上あると放送事故だとでも言わんばかりにずっと船長を映している、とにかく宝鐘マリンに溢れた4分間。少ない素材を切って貼ってとやってるわけですが、その素材の1個1個が船長好きによる船長好きのための愛によって作られているのでなかなか狂気的な仕上がりになっていて、「配信者」という性格がコンテンツに表れている気がする。ちょっと電波感のある不思議な曲なのも良い(歌詞の「ねっちゅう(熱中)して」のとことか、正気ではない)。

もう既にindie_animeのタグで調べるとウマくてエモいアニメーションが無限に出てくるような時代になっており、これからこういう「好き」で作られたアニメが個人レベルでドシドシ作られて、ドシドシ増えてくんだろうな~と思うと結構楽しい気持ちになりました。

 

終わりに

とりあえず一区切りしました。思い出したら追記するかもしれません。

 

ちなみに2021年TVアニメ10選+劇場アニメ3選です。

2021年といったら、みたいな基準で選んだはず。モルカーを入れたかった。

TVアニメ

  • かげきしょうじょ 
  • ゲキドル 
  • 装甲娘戦機 
  • 月とライカと吸血姫 
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劇場アニメ

FGO六章は強いアニメーターに鯖対鯖の各パート振ってそれぞれ強い映像をやってもらうっていうやり方が2021年らしいしシンプルで強いなと思ったので選んだけど、一本の作品として強かった『サイダーのように言葉が湧き上がる』『漁港の肉子ちゃん』『アイの歌声を聴かせて』のどれかに変わるかもしれない、くらい強かった。