ちゃぶ台

えんぞうです。書いた小説など

フェイズトランスホームカミング

 液化した体組織をたぷたぷに吸って重たくなった服を運んでいるから汗も出るし身体も溶ける。体重を支えるのに必要な筋繊維は分刻みで失われていくのに重さは変わらない。身体を包んでいる殻のような服の固い壁に、液化した自分の身体を転がしてぶつけ、倒れこむように前へ前へ進んでいく。この体重の使い方は夏がくる度に思い出した。ちゃっぷちゃっぷと内殻を身体が打ち付ける音がさらに暑さを不快なものにしている。セミの鳴き声が涼しく感じるほど、という例えをしようにもセミの声を最後に聞いたのはもうずいぶん昔の話で、今耳元で鳴いているのはネコだった。もともと液体だったネコはその自由さのために蒸発し大気中に広がっていて、着こんだ服の隙間から入り込んでくるようになり、ネコアレルギーのヒトは絶滅した。階段を上って二階、アパートの自室の扉を開け溢れてきた冷気が少しだけ俺の輪郭を固めてくれてようやく意識も動きもはっきりしてきて、服を脱いでろ過装置の上で絞る。多孔質の服にたっぷり浸み込んでいた俺の体組織やら汗やらなんやらが古新聞紙と胡桃を敷き詰めた上に溜まる。クーラーの冷気で流動性を失った体組織は装置のヒーターに加熱され再び自由に動き出し、空隙をすり抜けながら香りづき、老廃物や汗を置いて純粋な俺の一部だった頃に戻る。装置の出口と床の間に頭を挿し込んで細くなった筒の先端からニュルっと出てきたそれを口から直接取り込む。

「ほんとそれ汚いから止めな?」ぶわっとなだれ込む熱に咽て俺の一部たちがそこら中に散らばる。妹が窓を開けて部屋の中に入って来たようだった。部屋の空気が攪拌されて恐ろしい速さで空気の温度と粘度が上がっていく。パニックになった俺は床に落ちている俺たちを啜り始め、その下品なふるまいを許すはずもない妹の躾の熱風に焙られて、体表から俺が数パーセントとんでいく。上階の冷房をガンガンにかけた部屋が冷やす天井に集まって結露するも、一度粘度を持ってしまった体組織は重力に引かれるよりも先に流動性を失う。数週間放置していた天井には、ほんのり黄ばんだ乳色の突起が鳥肌のように並んでいる。

「意地汚い兄ぃよ、アレも食えよ」妹の腕が伸びつぶつぶした天井を撫ぜる。よく見れば突起たちにほんのり毛も生えている。

「食えるかあんなもん」

「中途半端なんだよな、兄ぃは。殻に籠るほどビビってるくせにさ」ほどよい弾性がお気に召したのか、一際長い氷柱状のものを突いて遊んでいる。

「てか、鍵かけてたはずだけど」

「一昨日から、あらゆる機械的な封印は私にとって無意味になったんだよ」

「じゃあなんで開けたままなんだよ」

「部屋が寒すぎて私の自由が損なわれるから」

 世界で二十二番目に魔女となった妹にとって、常人が液化してしまうほどの外気は魔法を行使するための熱源でしかないようだった。

「わたしがあげたジョッキあんじゃん。これ使ってよ」

 伸ばした腕が今度は食器棚へと伸びていて、誕生日プレゼントの五リットルのジョッキを掴んで振り回していた。壁面に残った数ミリグラムをどうしても諦められず、ジョッキの洗液を数回ろ過して飲んでいたのだが、濯いではろ過するのを何度も繰り返すうちに面倒になり、結局直飲みに戻ってからはめちゃくちゃ重いだけの使い辛い食器でしかなかった。という反論を待たずに妹はジョッキを俺に投げてよこし、空いた手で棚から目ざとく探し出したシナモンクッキーを三つ四つ掴んで頬張り、牛乳を直のみして流し込んで、手についたクッキーのカスを嘗めとる。俺はジョッキを受け止め切れずにひしゃげた腕をアイロンで焼きなます。

「そういやお兄ちゃん今年帰ってくるの」親に聞き出すように言われたのだろう。チャットアプリでもなんでも使えばいいものをわざわざ魔法を見せびらかしに来たのかコイツ。可愛いとこあんじゃん、と妹を小突く。しなやかな妹の身体が拳の形に合わせて変形する。「ちょっと太ったんじゃないか」

「しね」魔女の魔腕力で繰り出されるアイアンクローは容易く俺の脳を頭蓋ごと溶かし壊す。「帰んの。帰んないの」

「え か えかえ帰りますます」妹の魔法的処置により自分が溶けることへの恐怖心は取り除かれていた。

「おけおけ、いつ帰るか決まったら連絡しなよ」妹は窓枠にしゃがみ、尾鰭を生やすとふくふくと膨張しやがて浮きはじめ、そのまま窓枠を蹴って部屋を飛び出た。距離が離れていっているはずだが膨張しつづける妹の身体は一向に小さくならない。密度の低くなったスカスカの身体を未消化のシナモンクッキーのカスが通り抜けボロボロこぼれ、それを大きな尾が大気ごと掻き混ぜる。その擾乱をきっかけに大気中のヒト未満の体組織が食べカスに集まり、成長し、あちらこちらで人型をかたどりだして、十分な密度を得たものから落下する。地面とぶつかり一度ぺしゃりとつぶれるも、すぐに平気な顔で再生した。全て少女型で、そしてネコ耳を生やしたものばかりで、なるほど、ネコをたくさん含んでいるから高い所から落ちても無事だったのだ。新しい家族が産まれ落ちていく軌跡の先、十分な浮力を得るまで膨張した妹は今では入道雲と並ぶ大きさになっていて、遠く銀色に輝く水平線、太陽光を反射し大気を温め続ける海、生物全ての元、俺たちの実家、一言では母、の肩に手を置いた。俺はスマホを取り出して撮り、母が思いっきり白飛びしているその写真を『家族』のグループチャットに貼る。

 

妹『めちゃめちゃ盛れてる』既読3

母『あたしゃレフ板じゃないよ』既読3

   既読3『ピカピカできれいで良いじゃん』俺

           既読2『今から帰るわ』俺

 

 部屋のクーラーを切って部屋中の窓という窓を開け、風呂桶に入り[To実家]の栓を抜いてアツアツのシャワーを浴びる。身体の表面が融け出して栓を通って先に実家へと向かう。末端部から輪郭が失われていく。それが転移の合図だった。視界が液化した瞼に覆われ、自重を支える構造が解けた一瞬の浮遊感を最後に意識も潰れ、

 

 今実家にいま〜す。

 


 

奇想グランプリで出したやつです。

80%くらいの奇想度はあったようなので良かったです。

note.com

 

モモトークしてメモリアルロビーを集めるゲームの話

1.概要

ブルアカをメモロビ目当てで始めて、そして実際にモモトークしてメモロビを集めるゲームをしている感があります。

メモロビカードバトルやりたいな~と思いつつカードプールが少なくてやれてなかったのですが、先日ようやく100超えたのでそろそろやってもいいでしょう。やっていきます。

 

私の評価ポイントは3つです。

 

①イラストとしての質

 ブルアカの世界観を形作る要素として強いのは、色だと思っています。色があのスタイリッシュな影やフォルムを作っているといっても過言ではない。実際、時代を作っているなと感じます。

 あとまあ構図とか。

②アニメーションの設計

 動かしすぎない、というのが重要です。あと基本姿勢。メモロビは台詞が1パート終わると基本姿勢に戻り、また次の台詞パートに移るという仕様になっているのですが、この基本姿勢が不自然(口を開けている、バランスの悪そうな立ち姿、赤面)だといちいち基本姿勢に戻るたびに「どういうテンションなの?」となってしまいます。できるだけ色んな型に自然に移行できる基本姿勢を持つことはシチュエーションへの没入を助けます。

③シチュエーションの良さ

 「何やってんのこれ?」ってなるとどうしてもね…

 

あとは④キャラクターのストーリー的な背景なんかも入れてれば真面目だったのですが、それはメモロビ目当ての作豚っぽくないなと思ったので欲に忠実にいきます。作眼ないけど。作眼がない作豚って存在醜悪過ぎないか…?

 

2.デッキ

一枚目

ユウカです。

「全てのプレイヤーが初めて手に入れるメモロビ」としての設計があります。シャーレの執務室というロケーションがまず良く、ホーム画面に設定していても違和感がない。あとユウカにはずっと叱られていたいので、シチュエーション自体に繰り返し観ても大丈夫な強度があります。

抑制的なアニメーションも好みです。基本座り姿勢なので全然動かない…と思いきや、視線の移動や眉、まばたきなどの動きは適切に主張していて、焦った時の頬の色づきや口の形のオーバーな変形もあり、萌えです。まあまずどんな構築のデッキにも入ってくるのは間違いないでしょう。

 

二枚目

ミユです。これは良すぎて感動してしまいました。

Live2D的なアニメーションは「イラストを無理やり動かす」という性質上、あまり動かさない方が違和感が出なくて良い……という矛盾をはらんでしまっています。一枚目に挙げたユウカも座っているシチュエーションでまず勝っている面が強いです。

狙撃っていうシチュエーションが天才だな、と思いました。スコープを覗く基本姿勢はミユのあらゆるリアクションに無理なく接続され、彼女の狙撃手としてのプロフェッショナルさと少女の可愛らしさの両方を演出します。あと、動物が多いのもSAKUGAっぽくて豪華で良いですよね。

水着のミユも似たような理由(釣りというシチュエーション、動物がいて賑やか)でお気に入りなのですが、狙撃の冷たさを感じるこちらに軍配が上がりました。殿堂入りの一枚です。

 

三枚目

ハナコ(水着)です。いや~、圧倒的なイラスト……「出会ってしまった」という運命的な衝撃がある瞬間だな、と感じます。メモリアル。

透き通った世界観の謳い文句に相応しい透き通り感、ハナコと言えば発言の濁りをよく取り上げられるキャラという認識がありますが、ストーリーを含めてものすごくピュアな…というか飾らない、”自然体”の作りになっていたと思います。

これはシチュエーションとしてハナコの表情や動きに派手な要求がない、というのがそもそもありますが、アニメーション設計的にも破綻がなく、始終ずっと見入ってしまいました。ブルアカの勝利です。

 

四枚目

ユズ(メイド)です。

ちょっと斜めの構図の収まりの良さがあります。先生の目線を考えても、覗き込んでいるポーズを感じられるので完璧です。ユズをまるごと影の中に置きつつ、日の当たる脚の白さが眩しく、色・影の設計としても匠の技を感じます。あと猫の表情が和やかで、対照的に慌てるユズのコミカルな変化も楽しくて良いです。

 

五枚目

鬼太郎みたいなお口がいいです

コトリ(応援団)です。

おなかに目が行きがちですが、表情の変化がすごく楽しいです。やはり表情が活き活きとしていると、生命を感じますね。萌えアニメとは表情なのかもしれません。あと普通におなかも好きです。

 

六枚目

イロハです。秘密基地はずるいよぉ~… 

生徒が自分の秘密基地に呼んでくれるシチュエーションはどれもお気に入りですが、とくに過ごしやすさを感じたイロハをチョイスしました。いじわるな表情もいいですよね、サボってる感が”二人の秘密”を強く演出しています。

 

七枚目

アヤネです。このゲーム眼鏡キャラに厳しくない?

「(メガネ外すと可愛いな…)」みたいなシチュそのもので笑ってしまいましたが、顔アップなので、ととにかく動かしていて分かりやすくSAKUGAで、CMで使われているだけはある出来の良さです。普通に「(コイツ、メガネ外すと可愛いな…)」って思ってしまいました。ブルアカの勝利です。いやアヤネは眼鏡してても可愛いから…

 

八枚目

スズミです。たぶん一番キレイな横顔です。

ず~っと顔が窓の外を向いているのが良いですし、実際窓の外には納得できるだけの景色があり、このロマンチックな空間にはメモリアルな瞬間としての説得力があります。

そもそもこの横顔だけでかなり評価していたのですが、最近ボイスとアニメーションが追加され最強になりました。一瞬こちらに視線を向け、しかし慌てるようにまた外の景色に視線を向ける…顔を赤らめつつ…というリアクションが素晴らしいですね。また、外の景色を眺める横顔という基本姿勢も完成されています。

 

九枚目


チヒロです。

深夜二人で缶コーヒーを飲む…シチュエーションの勝利です。二人の間の静けさとは対照的に自販機や非常灯の赤の煩さが画面中に置いてあるのがいいアクセントになっています。

多少動き過ぎのきらいはあるものの、そのどこか芝居がかった振舞いも「ちょっとカッコつけたいチヒロ」みたいな背伸びした印象を感じ取ることができ、好いです。

チヒロ、早く寝なね。

 

十枚目

ヒビキ(応援団)です。シンプルに好みです。

生徒の心の声が聴けちゃうことの意味があんまり分かんなかったり、基本姿勢の悪さがあったりとおれが減点する要素がいくつかありますが、ヒビキ(CV.名塚佳織)が一生懸命応援してくれること以上にこのメモロビを評価すべき点はありません。表情のレパートリーがたくさんあるのも可愛いです。

実は何気にこちらもロケーションがシャーレの執務室で、しかも深夜なので、一枚目にユウカを置いた構成の〆としての美しさもあります。

 

3.惜しくもデッキから外れてしまったみなさん

ぱっと見のイラストの強さ、夏感が良い。畑というロケーションも珍しく、泥で汚れつつも晴れやかな笑顔という若さが光るのも好印象。強い日差しでヘイローが反射で白とびしているのもオッと思った表現だった。気分でアヤネと入れ替えて運用しています。

 

かわいいね~ かわいいです。華麗なドラテクを披露する姿や面倒見の良さに惹かれて普通に好きなキャラですが、胃袋掴む系も一個は入れときたい気持ちがありました。基本姿勢から赤面への移行が固いのと、作っている料理の献立が謎だったので外れましたが、お気に入りなのでたまにデッキに入れて運用しています。

 

ナツはね~ キャラが好きです。メモロビもお宝さがしというシチュは好きです。

 

溢れそうな気持がギュッと身体に詰まってそうなポーズと表情が良いな、と思いました。最初の頃はスタメンだったので、今でもたまに思い出したようにデッキに挿し込んでます。

 

ネカフェで雨宿りは硬派なおれのデッキに入れるにはちょっとエロかったね。コートからしたたっている水がいい仕事をしています。

 

おれはこれをみながら何してんの?なんで生徒の考えていることが駄々洩れなの?という疑問を振り払えませんでしたが、イラストが可愛くて良いです。

 

これが動くんや~~~という素直な驚きがありました。草の質感も良いです。あんまりブルアカらしくないタッチなのも気に入っていますが、えっちマン認定が怖いので外しました。たまにデッキに入っています。

 

コハルは楽しいキャラですが、その楽しさがよく出ているメモロビで、良いなと思いました。たまに見返しているくらいが丁度いい距離感かな、と思って外しています。

 

背中、そう来たか…という感じです。胸は絶対隠さないといけないので、一番肌の面積を晒せるのは背中なのだよな、という当たり前のことに気付いて感心しました。首からの露出もセクシーですね。光の具合もよろしく、黒い肌と黒い尻尾が強い光で白くなっているのがイオリが日常出さない輝きを作っていて、露出の多いシチュとの相性が良いです。えっちマン認定が嫌で外しました。

 

えっちマンだと思われるのが嫌だったので外しました。

 

4.余談:モモトークの話

・生徒たちが文字を打っている時間が演出されているのが良い

・あんまりチャットとしての生感は意識してないのだろうか?キャラにそぐわぬ(このキャラならもっと固いテキストを打つだろう、という意味)喋り言葉だな~と感じることがままある。アニメキャラとしての自然な誇張の範囲として受け止めるべきか。

・衣装ごとにアカウント作っているのが面白い。(ライディング)は趣味アカウント、(応援団)は団内連絡用アカウントと考えるとして、(水着)(正月)あたりの異質さに笑った。

・画像送ってくるの好きなのでジャンジャンやって欲しい…

 

声の化石

「子どもの頃はずっと化石堀りをしていた記憶しかない。遊んでいたわけではなく日々の暖を取るためで、父も母も化石を掘っていた。化石以外のものは父母の親の親の親のそのまた親の頃全て燃やされてしまったので、この星にはもう化石しか残されていなかった。化石を掘って、燃やして、ゆるやかに凍えていく。わたしは化石掘りが好きだったから良かったけれど、そんな生活に疲れて動かなくなってしまったご近所さんは少なくない。それを埋めて、新しい時代のための化石の種とするのもわたしたちの仕事のひとつだった。『おまえのおじいちゃんのおじいちゃんのおじいちゃんの、とにかくずっと前に動いていた祖先の身体が、今私たちを温めているのよ』ひとならざる形の化石が炉の中で黒くなっていく。『わたしもやがて立派な化石となる』おまえを暖めてやることはできないけれど、と寂しそうな顔をしながらわたしを抱いてくれた父の体温。父を埋めたのは、わたしと母だった。母はわたしがひとりで埋めた。

 母を埋めてから二年後のことだった。公園の砂場に化石を掘りに向かうと、北の由田からやってきた行商が露店を構えており、そこに広げられた品々といえば先ほどまで生きていた動物の一部だったかのようにまだ瑞々しく、朝の冷たい空気の中で凍っていた。ひとつひとつは手のひらに乗るくらいの大きさで、おそらく身体の端のほうにいたものたち。『他は大きくて運べなかったんだ』唯一動いているはずの口も俯いていて見えなくて、本当に行商が喋っているのかは分からなかった。

 その日はちょうど砂場で化石を手に入れることが出来たから、行商から〈指〉を二つと〈穴〉を交換してもらった。肉の化石は燃えないと言っていた行商の言葉通り、いちばん渇いていた〈指〉すら燃えづらく、薪として使えば逆に火が弱まってしまう。捨ててしまってはもったいないのでもうひとつは食べた。噛むごとに味ではなく石由が染み出てくるので、これが燃えないのは何かの冗談だろうと唸りながらなんとか完食した。由の味に気分を悪くして机の上で伏せていると、頬に湿って暖かい風を感じた。まさか、春が? 触覚を頼りに風を辿った先は〈穴〉の中だ。氷の下で数万年眠っていたはずの化石の内側はねちゃりと濡れていていて、その奥の方では何かが燃えているような熱がある。かざした手のひらが、熱を運ぶ風のわずかな震えを拾う。肌はそれらの正体を探るため〈穴〉へと近づいていき、ついにはかさかさに渇いた縁に触れる。ふいに、眠る前に耳元で静かに物語ってくれた母の吐息を思い出す。あの時、母は何を聞かせてくれたんだっけ。歩く塔、削れた氷、空の街……お話の細部が、ひとつひとつ形になっていくたびに化石の吐息のうねりは強くなり、掠れた音の太さが増していく——

 

「いつのまにか寝落ちしていたらしく、昨晩解凍した〈口〉から漏れてくる声はシクシクと自らのつまらん半生を振り返っていてうんざりくる。始めは甘ったるい声でメルヘンな妄想を語る可愛いやつだったのだけど……と昨晩の思い出に浸りながら腔内をくちゅくちゅといじくり話を遮って頭が覚醒するのを待つ。隅々まで湿っていて燃えない肉の中でも、穴であるために身の部分が少ない〈口〉を欲しがるようなもの好きはいない。どうせそこらに放置されているのだから、わざわざ早起きする必要はなかった。そのまま横になりやる気を待っているうちに、声はだんだんと小さくなっていく。温度と振動を求めて指を奥へ奥へと突き入れ、しかしとうとう喋らなくなった〈口〉は指の水分を吸い取ってしまうんじゃないかというくらい渇いて萎んで、こうなればもう燃やす以外の使い道はない。あっという間に燃え尽きる化石から強く芳香する石由臭。ゆら、ゆら、煙が天井から吊るした〈口〉たちの間を昇っていって天井に溜まる。燻されて温まった上の方の〈口〉達は化石なので呼吸をしないから咳をすることもなく喋り続ける。声の大きいものから紐を下し、外気に触れて寒い窓際や部屋の隅に置いておく。そうやって積まれたいくつもの〈口〉はそれでもこの小さい家に収まる程度の量で、これがおれの全財産だった。そして今日も明日も少しずつ増えていく。袋の中は拾ってきた〈口〉で半分ほど埋まっていて、つい先ほどまで凍土の中にあったそれらは何も語らない。肉付きがよくえっちな感じのするひとつを取り、その縁の方を揉みほぐしていく。指圧と一緒に体温を与え続けていくうちにぷにぷにと弾力を取り戻して初めてようやく〈口〉は声を出すようになる。『美少女の兄です、全てをお話しま』どうせなら妹の方を出せ。手近な肉を詰めて塞いで燃やす用にする。『いちばん、すいそ、いち、ぜろぜろななきゅうは』作業用。『チュパ……ジュルッリュチュリュリュ……』何か……何かに使えると思う、何か用。『妹です、全てをお話します』とっておきのごちそうだ。後で聴くものに仕分けたものは凍らせておいて、燃やすものは暖炉のそば、部屋の少し暖かいところに置いておく。このように動けるようにしておくことで、小さい声でもごもごもごもご渇いていくようになっている。そうして静かになった二、三〇個を暖炉にくべる。〈口〉は喋りきっても最後はぱちぱちと美しい音を出す。熱、安らぎ、おれは火が好きだった。入眠用の〈口〉をひとつ持ってきて毛布にくるまる。『こうやっていると、なんだか…』なんだか、何? 『ううん、なんでもない』おれもおそらく同じ気持ちだった。『ふふっ』という柔らかな笑み。二人の間に穏やかな時間がながれて……そして翌朝、脳を揺さぶる騒がしさで目が覚めた。あの演技プランからなぜこんなことに。喉の奥まで指を入れるも、ギャンギャンガヤガヤと鳴る声たちは一向に止まない。声たち? 覚醒し始めている耳と脳は毛布の外の、複数の声を拾っている。音に聴きしセミのごとく音を降らすのは部屋に吊るしてあったり積み上げてあったりした他の〈口〉たちだった。好き勝手に垂れ流されるこれらの整理をしなければ。膨大な作業の量とその怠さで動けなくなったおれの顔にぴちゃりと水が落ちてくる。天井からつり下がるつららの表面が溶けて滑らかに光っているのを確認し、そこでようやく部屋が温かいことに気付く。夏ってもしかしてこれか? 窓の外は何も変わっていないように見える。再び天井から水滴が落ちてきて、おれはようやく毛布から出た。毛布から出たことを後悔しないくらい部屋が温かいのは幸いだった。とりあえず連なって震える〈口〉に肉を詰めていく。そのうち詰める用の肉が全然足りなくなったから、〈口〉と〈口〉を張り合わせることで間に合わせる。お互いの声を交換し合う様はなんとも可笑しかったので幾分留飲を下げることが出来、冷静さを取り戻したおれはこの状況を生み出した元凶を探し出す。さて、室内に忌むべき夏をもたらした熱源は、果たして暖炉のそばに見つかった。燃やす用の〈口〉は今やかざした手に熱を感じるほどにもごもごと口を震わせていて、おれは暖炉から火箸を取り、その口を塞いでいる肉を外した——

 

「〈口〉の声から熱を取り出す機械が発明されて間もない頃は、詰め物の振動として熱を取り出す単純な構造で、詰め物が改良されるようになり、複数の〈口〉が互いに互いの声を強めあったり弱めあったりすることが発見されるなどして取り出せる熱量は次第に増えていき、その過程でたまたま〈腕〉を詰めたところ、ひとりでに動き出したことから肉の化石の機械は発明されることとなる。単純な熱を取り出すよりも高効率に運動エネルギーに変換でき、肉の化石が歯車を回し、大規模な採掘が行われ、その大量の肉の化石がさらに多くのエネルギーを産みより多くの化石を採掘する。〈口〉が肉を動かす機構について研究が進み、より細かい運動を制御できるようになるころには余裕が出てきたのか、工業用途以外の機械が登場し始める。肉の化石戦争、通称肉戦が子どもたちの間で流行したことはそれだけ物質的に豊かだったことを物語っている。限られたフィールドの上で各々が組み立てた肉の機械、〈駒〉をぶつけ合うというその遊びは、初めは段ボールや勉強机というそれらしいサイズに始まったものの、エスカレートしていくにつれ兵装の規模や筋積載量が増えていき、十メートル四方の土台の上で取り組みが行われるようになるころには、相手を粉々の肉塊にするバーストフィニッシュと呼ばれる贅の極みのような決着が認められていた。肉をより効率よく破壊するための設計が練られるようになり、破壊の技も派手になっていき、そして当然のように巨大化していった。飛行能力、鋭利な牙、肉を焦がす熱線、黄金色の機体……強さと見栄えの良さを追求するためにあらゆることが許されていた混沌の時代は、しかしある少女が偶然発掘した古代兵器の登場を皮切りにより破壊し尽くされたのは記憶に新しい。伝承にある龍のようなそれは爬虫類の化石ではなく、〈駒〉のように複数の肉を組み合わせて作られた機械であり、高速に飛行する機動力と火球を用いたアウトレンジ攻撃、あとは超筋力による単純な馬力の高さで世界大会まで登りつめる。待ち構えていたのは同じく古代兵器を従えた四天王八柱十六皇、規格外の力と力のぶつかり合いにあぶり出される大会理事の陰謀。龍と少女は肉を失い、またかつての対戦相手から肉を受け取りながら、最後の戦場で勝者として立っていた。大会理事兼大手ホビー会社社長兼少女と決勝を戦った少年の父親は息子を二対の巨塔が頂く玉座に呼びつける。龍に敗れた猿は主人を真似て彼の父親に頸を差し出す。少年の腕ほどもある指が猿の顔面に差し込まれて〈口〉を捥ぐ。いくつかの魔術的な操作のあと、少年の知らない声で語る〈口〉に共鳴し、玉座の下の巨塔たちが震え始める。『フハハ、もう誰にも止められぬよ』肉で出来ていたその巨塔は、いまは原理も分からぬ謎の力で浮いており、それぞれ片側の平たい先端から生えている五本の根を広げてその威容を余すところなく示していた。『お前が今破壊した肉、私と私の息子が手塩にかけて育て上げた肉。それを制御していた〈口〉こそが鍵だったのだ』少年は何も語らない愛機を抱えて泣いている。

『もうこの世界というものに飽きてしまったのだよ……スクラップアンドビルド、俺がもう一度作り直す』

『アレを攻撃すればいいドラ!』龍の翼が指す先、塔と塔のちょうど中間に〈口〉が浮いており、大地を真っ新に均すための制御コマンドを呪文のようにブツブツ唱えている——

 

「気球都市から離れ、ゆっくりと星に降りていく我が家の底が大気層に触れたのか、無数の砂がザァザァと叩く音が届いて寝床を細かく振るわす。ベランダに出て薄く赤い空の奥の方を覗くと、どういう原理で浮いているのかぜんぜん分からない大きな重機の大きな指が、かつて町が建っていた地面の端をつまんでぺりぺりと掘削していたところだった。掌の上で捲った地面を揉んで転がして、あるいは親指の腹で摺り、撫でていくうちに岩、石、土砂、そして氷がそれぞれ自発的に集まりながら指の隙間から落ちていく。残るのは化石だけだ。その間にもう一方の腕が、捲られた後の地表に残っていたり、こぼれ落ちたりした化石を大きな指で器用につまんで採る。五万種以上七兆五千億体分の肉の化石を繕って建造されたその重機は、町を浮かせるための化石をやすまず炉に送り続け、その装甲は乾燥と冷気に晒されひどく荒れている。それを不憫に思った幼い頃の私は軟膏を気球の上から垂らし、おとなに『無駄をしてはいけませんよ』と叱られていた。おそらく軟膏が届いたことはなかったし、届いたとしても効くことはなかっただろう。それでも、誰かが労わねばならなかった。

 この家は親から譲り受けたものだった。気球都市中心の太陽より温かなものと比べれば随分小さいけれど、家ひとつを浮かすことのできる立派な炉だ。かつて一家団欒を暖めていた大きな火は、しかし焚べる化石の量を減らしたために親が生きていた頃より随分と小さい。遠い先祖が起こし代々育てられてきた火が弱まる様子に申し訳なさを感じつつ、家が浮力を失うにつれて大きくなる地面の存在感に意識は引っ張られた。とうに手を伸ばせば繋げそうなほど腕は近くにあったが、耳を澄ましてもその声は聞こえない。伸ばした手を引っ込めると、冷たい砂に叩かれた肌から少し血が出ている。

 働きものの母の手とそれが作る温もり。私の記憶のほとんどはそれと結びついている。棚に差し込まれている無数の地質模型からひとつテーブルに広げ、地面表層を端から剥がし取り、土と砂を振り分け、微塵に挽いた化石だけを選び採る。子供の頃から見てきたその手つきは腕が覚えるまで真似た。口は覚えただろうか。採掘の過程を唱えてみる。かりかりと爪の先で地層の隙間を探り当てて……どのように記述すれば上手に腕を接ぐことが出来るのだろう。母は褒めてくれるだろうか。外の巨大な腕の動きは既に鈍く、中央にある〈口〉は微かに排気音が聴こえるばかりだった。砂の覆う上空には気球都庁の公用船の影があり、次の継ぎ手を載せて降りてきている。私と母に残されている時間はもう幾許もない。舵を取って母まで目一杯近づいて、両手いっぱいに肉片を抱えてみせる。どうだろう母さん、見様見真似にしては上手く出来たと思うんだ。母さんこれ、褒めてよ。母さん!

 

 


 

去年の文フリに化石テーマで書いたやつです。

 

t.co

MY NAME IS(任意のアニメの台詞):2022

1.私の名前は(任意のアニメの台詞)です

週に一度、テレビアニメの台詞を拾ってきてはTwitterのハンドルネームに飾っています。おおよそ下記のようなルールがありますが、しばしば無視します。

 

①実況中拾った新鮮なものであること。録画からは選出できない。

②面白すぎるので、面白すぎる台詞は避けること。

③かといって印象のうっすい台詞を選んではならない。

④7日を過ぎて同じ名前であってはいけない。

⑤字幕に準拠するなど、極力公的な表記を心掛けること。

 

2022年もアニメがいっぱい放送されていたおかげで145の台詞を拾うことが出来ました。

 

ので、それらとともに一年を振り返りたいと思います。

 

2.収穫物

「なんて素晴らしいお力…」魔法科高校の劣等生 追憶編

どういうシーンで誰が言ったのかが一瞬で分かる素晴らしいセリフですね。追憶編はこれ以外にも深雪殿のさすおにに溢れていてよかったです。一月一日の放送から幸先の良いスタートを切れたのでハッピーでした。

 

「やっぱ、声優ってすごいわ~」CUE!第1話

やっぱ声優ってすごいなと思っての選出です。

 

「いえ」22/7計算中 season3 第41回

滝川みうさんの大人の女性観、いいですよね。さらによいことに、彼女が大人になった頃には自分は完璧に「いえ」を使いこなしていると思っている。計算中はアニメ判定でいいだろ、萌だし…

 

「黄身2個だよ~」明日ちゃんのセーラー服 第1話

ハッピーだね……

 

「煽るのはやめていただきたい」現実主義勇者の王国再建記 第14話

やめていただきたいよな。

 

「オス~~~!」プリンセスコネクトRe:Dive 第2期 第1話

オス部分を完全に除かれた岸君がオス~!って元気に喋ってるのが面白すぎて選びました。

 

「わし、かわいい…」賢者の弟子を名乗る賢者 第1話

元永慶太郎監督のナイスアニメ。作中台詞をサブタイにするアニメだ~! Bのサイレントパートが強気で良かったし、ここぞってときにサブタイの台詞が来る時の気持ちよさと言ったらないよ。

 

「わたしをエッチと申したか」ありふれた職業で世界最強 第2期 第1話

ありふれはエッチだしかっこいいし萌え萌えなのでいいと思います。という感じの一話で良かったです。なかでもユエさんてこんな萌え萌えだったっけ……と新発見じみた感動があったセリフを選びました。

 

「かける3!」失格紋の最強賢者 第1話

さんすうができてすごい!

 

「めちゃくちゃかわいいっていうのは、めちゃくちゃにするぐらいかわいいっていう意味だからな」賢者の弟子を名乗る賢者 第2話

アニメから教わることは多く、これはその一つです。以降おれがめちゃめちゃかわいいって言ってるときはこの意味で使ってます。

 

「全校生徒の前で射精が止まらなくなってしまって…」その着せ替え人形は恋をする 第3話

Twitterで全校生徒の前で射精が止まらなくなってしまった人からリアクションが来たら笑えるだろうな、と考えての選出です。恥を知った方が良い。

 

「ちぃ~っとストッピ」賢者の弟子を名乗る賢者 第3話

レトロな言葉選びで笑いを誘う技はちょくちょくみますが、「ストッピ」は逸してるだろ。

 

「年末年始は寝てすごそう!」CUE! 第4話

非常に良い言葉だなと思い、選びました。今回の年末年始も寝て過ごそうね。

 

「感動のシーンなのに、笑いが巻き起こってしまったわよ~!」トロピカル~ジュ!プリキュア 第46話

一年もののシリーズの最終回って約四十数話分のお話が乗っかってきて非常な感動があるのですが、最後まで騒いで笑って楽しくてというトロプリらしさそのものを言っている台詞だな~と思い選びました。

 

「犬のフンふんじゃった」トロピカル~ジュ!プリキュア 第46話

これが夏海まなつさんのシリーズ最後の台詞らしい。嘘だろ……。

 

「まんままりんでいっか」その着せ替え人形は恋をする 第5話

音が良いですよね。まんままりんでいっか。いまでもたまに頭にふっと湧いてきます。

 

「服脱げそう!」その着せ替え人形は恋をする 第5話

なんでこっちにしたんだっけ……観返しても分からない。字だけみるとまんままりんでいっかの方が500000000倍いいのに、と思います。

 

「ありえるぞ、犬は賢いからのう」時光代理人 第5話

モブのおじいちゃんの台詞です。こういう味のある台詞がモブの口からサラッと出てくるのが良いし、これに対して何かリアクションをとって引っ張るでもないのも良い。

台詞の節々から出ているおじいちゃんの犬好き感もまた良い。

 

「おまえー!」賢者の弟子を名乗る賢者 第5話

こういうすんげえシンプルな台詞がおもろいのはイイアニメだって証拠なんだよな。脇をつつき合っているみたいな仲良し感も俺の好みドンピシャです。

 

「汚…」あたしゃ川尻こだまだよ デンジャラスライフハッカーのただれた生活 第5話

川尻こだまは軽い内容というのもありパクパク頂けちゃう優秀なアニメではあったのですが、イグジットさんのバラエティ番組内で放送されていてかつド深夜、実況難度の高いアニメだったのでなんとしても台詞を採取したかったのを覚えています。悠木碧さんの演技力が乗った「オ…」という台詞に文字演出がついていてシーンとしても楽しく、またHNとしても音の短さや一見してなんと呼べばいいのか分からない感じが気に入っていました。

 

「真実はこうなんだ~」現実主義勇者の王国再建記 第19話

真実を話すときの前置きに「真実はこうなんだ~」って言うことあんまりないな…という可笑しさが、これ単体でも伝わるという良い台詞ですね。おれもたまに「実は〜」を言い換えて「真実はこうなんだ〜」と言ってみたりしています。

 

「俺のキングは、アンタに決めたぜ」薔薇王の葬列 6話

悲劇につぐ悲劇、重すぎる内容のなかでポケモンのサトシみてーな活力に満ちたセンスの台詞だったのでより一層輝いて聴こえました。このHNでリアクションを取れば相手に対して王認定もできるというおいしさ。

 

「おしっこ」賢者の弟子を名乗る賢者 第6話

プレイヤー友達のソロモンに大きい方か小さい方かを聞かれたミラさんの返事。このシンプルなやり取りの中に二人の間柄が見てとれて温かいですね。賢でしはトイレネタがよく出てきますが、どれも下品になりすぎないところが良いです。

 

「水陸両用なんだ…」ジョジョの奇妙な冒険 第6部 第7話

ジョジョみたいななんでもありみたいな作品からこういう妙に冷めたツッコミが出てくると無限におもろい。

 

「え?闇だから?」CUE! 第7話

ウケを狙いに行ってるとかじゃなくシンプルに疑問に思ってそうな言い方が面白かった。

 

「あれ買い物行くとき便利だったのに…」現実主義勇者の王国再建記 20話

たしか橋のことだった気がする。確認しようにもFOD独占なのでした。政治の話の途中で急に生活感溢れる台詞が来るのが原告の良い所で、これを狙ってやるのは難しい。

 

「ぱんぱんの、みちみち」賢者の弟子を名乗る賢者 第7話

語感が可愛いし、ちょっとエッチでいいよね……間の読点がある感じもそれぞれの擬音の効果を強くしてて良かったです。ライトな深夜アニメとしての自覚。

 

「そのでこ五センチ広げるわよ!」明日ちゃんのセーラー服 第8話

蠟梅学園で許される罵倒のレベルを思うと笑ってしまった。

 

「9回起きれば勝てる道理よ!」怪人開発部の黒井津さん 第7話

マジで思ってそうなところに黒井津さんの設計思想が出てて良い。

 

「通常、畜生に用いる」時光代理人 第8話

こういう笑いを誘うために配置してるであろう台詞で笑ってしまってただただ悔しいけどマジで面白かったし今も笑ってます。翻訳した台詞の硬さ加減も絶妙でズルい。大陸産アニメの良さだよな。

 

「ストレートでいいネーミングですね」東京24区 第8話

ネーミングがストレートすぎて笑ってた直後にきたので耐えられなかった。いいネーミングだと本気で思っていたのかそれとも微妙だと思っちゃったからちょっとフォローを入れたのか、まあどっちにしろおもろい。

 

「名前なんか知らない!」CUE! 第9話

これは多分自分のHNに名前なんか知らない!って台詞が乗っかってたらウケるなみたいなやましい気持ちがあって選んだ奴と思います。恥を知った方が良い。

 

「一億円札が一枚。」怪人開発部の黒井津さん 第8話

急に小学生みたいなノリのギャグがくる黒井津さんのこと大好きだよ……

 

「新しいプレイスタイルか~?」フットサルボーイズ 第9話

煽りにしか聞こえないんだよな。煽りではなかったのだけど。

 

「良き肥やしとなるだろう」賢者の弟子を名乗る賢者 第9話

前話数まではこういう急に壮大なスケールでの台詞でボケるのはなかったので新鮮で面白かった。賢でしは結構な頻度で下ネタを入れてきたけど味変にも気を遣っていたから飽きなかったね。

 

「すごい…絵から激しい主張を感じる!」東京24区 9話

アニメから激しい主張を感じたりしたときに使っていきたいなと思った。

 

「私たちの妹ながら便利すぎね…」現実主義勇者の王国再建記 23話

妹かつ便利という大盛キャラ……というかサラッとモノ扱いしてない?

 

「そやそやそよよ」みゅーくるどりーみー みっくす 第49話

みゅーくる屈指の名台詞「そやそやそよよ」が最終回も出てきてくれて嬉しい!インターネットのオタクは早く月島まいらちゃんのそやそやそよよ集を作ってください。

 

「わし、かわいい〜♪!!!!😊」賢者の弟子を名乗る賢者 第12話

大森日雅さんが最終話実況時にツイートしていたこれが可愛すぎたので拝借しました。賢でしの第一原理であるあるわしかわを最終回にも持ってくるという当たり前のことを当たり前のように出来るというのが信頼につながるんだよな。ありがとうございます元永慶太郎監督…………

 

「せめて正しい選択をしてくれなのじゃ」現実主義勇者の王国再建記 第26話

このアニメ最強最悪の元凶、先王の丸投げっぷりにはいたく感動したものです。ここで「悔いのないよう」みたいな台詞がこないところがマジでカスの王でいい。反省してるっぽい態度もこちらの「いやゆるせないんだが…」みたいな気持ちを誘ってくれるのでいい。

 

「十円玉デカッ!?」トモダチゲーム    第1話

10円玉がデカいことに対するリアクションとして100点だった。


「もう、シスコン!」東京24区    第12話

おれに言った? 

不出来な部分もまるごと愛したくなるくらい素晴らしい最終回でしたね。

 

ぴよぴよ〜」ビルディバイドFFFFFF 第14話

カワイ~

 

「これがアドレナリンというやつかな?」境界戦機    第14話

2期始まっても格好のつけ方が境界戦機らしくて、前期の雰囲気を思い出すのに苦労しなかったです。


「いきなり死ねとおっしゃるのかオリビアさまは〜!」史上最強の大魔王、村人Aに転生する    第2話

なんかあんまり真に迫った感じじゃなくてちょっと浮いてたのが面白かった記憶があります。


「なんか印象のうっすい横文字ネームだったんです… 」まちカドまぞく2丁目   第2話

なんか印象のうっすいアニメの台詞を名前に置きがちな俺のHNに置いてたら面白そうだなと思い選んだ奴だと思います。恥を知った方が良い。

 

「士道…とひとつになったわたし。」デート・ア・ライブⅣ 第4話    

マジで前シリーズのこと1ミリも覚えてないから鳶一折紙さんの異常行動に毎回ビックリするんだけど、この時は吐くくらいゲロゲロ笑ってしまった。

 

「頭いいとめちゃ便利ね!ネットいらないじゃん」カッコウの許嫁 第1話

頭がいいとネットいらないんだよな…(?)

 

「 私の死に触れてよぉ〜!」 魔法使い黎明期 第4話(次回予告)

初めて次回予告から選んでしまいました……なんかソウルシリーズキャラみたいな台詞なのにめちゃめちゃラノベアニメっぽい演技なのがめちゃめちゃおもろかった。

 

「この国のセンス!」バーディーウイング    第5話

たまに疑うよね。でもそのコスチュームは非常にセンスいいと思うよ。

 

「イエスマイロード」史上最強の大魔王、村人Aに転生する 第5話

後にも先にもこれ以上ノリノリなイエスマイロードが聴けることあんまない気がする。機械音声みたいなディレクションのキャラなはずなのにテンション上がってるように聞こえたので(伊藤さんのかっちょいいエフェクトも相まって)こちらのテンションも上がった。

 

「王子じゃ〜ん」ダンス・ダンス・ダンスール  第5話

よすぎてみてて辛くなることも多かったダンスールの演技(声優のでもあり、役者としてのキャラクターのでもあり)、5話のなかなか死なない王子はもうやめてくれ…という気持ちもありつつ、そういう恥ずかしさを上回るもっとやれ!という感情が最高に気持ち良くて、こういう体験には「王子じゃ~ん」みたいなちょっと茶化してる感じの台詞がよく合ってたなと思いました。事情を知らない人たちは気軽にいいねと言ってしまえるんだけど、当人たちの間では深刻な戦いがあって…という舞台と客席の断絶があって良かったです。


「おいしおした?」舞妓さんちのまかないさん 第31話

はんなりとした中に少女の可愛らしさのある音で、とてもほっこりした台詞でした。


「何かに勘づいた妹。」古見さんは、コミュ症です。第18話

賢い妹って最強なんだよな……このクールは強い妹が蔓延る魔窟でしたが、素朴なデザインながらも強烈な萌えをぶつけてきた只野瞳さんはかなりお気に入りです。


「これで50円!」かぐや様は告らせたい ウルトラロマンティック 第6話

味の濃いかぐや様の中だとすごいほっこりとした地味なギャグで、いいな…と思ったころにはHNにしていた。


「大型ユニットの高速展開に震えろやぁ!」ビルディバイドFFFFFF 第19話

TCGアニメはハイテンションで突拍子もないセリフの応酬があるので僕のお気に入りのジャンルの一つです。といってもこれは大人しい方なんだけど、「大型」「高速展開」「震えろ」辺りがずらずらっと並ぶのが派手で良いですね。

 

「ケーキ、キャンドル、嬉しさ」ヒーラーガール 第8話

ペンギン・ハイウェイの「お姉さんの顔 遺伝子 うれしさ 完璧」のような、なんとか言語化しようとするもでもまとまり切らない単語、というのがかなり好物で、じーんと来てしまった。


「それにこれはまだカレーに方向転換できる」サマータイムレンダ 第7話

カレー回は名作。

 

「パ、パツキン!?」バーディーウィング 第9話

バーディーウイングはどちらかというと古めのセンスが光るアニメですが、にしてもパ、パツキン!?!?となってしまうだろ。パツキンって言った!?!?


「みんなに幸あれ」であいもん 第9話

おれはフォロワーさんみんなの幸せを願ってるよ、という気持ちで選びました。恥を知った方が良い。


「カレーの手順をフカンして落ち着け!」サマータイムレンダ 第8話

カレー回は名作だしこのアニメのキーワードでもある「フカン」も入ってて芸術点が高い。あまりに自動的に作りすぎてカレー作りの手順など考えることがなかったおれもこれ以降ぽつぽつとレシピを組み立てることが増えました(いい話)。


「ヘブンボンバーからヘルボンバーになるらしいですよ」であいもん 第10話

女児アニメの必殺技が地獄になっていよいよ物騒になってしまう。一果ちゃんが悪い言葉覚えたらどうしよう……。


「ん しょ 」であいもん 第10話

という心配がどっかにいってしまうくらい可愛い台詞でしたね。「ん(間)しょ

」という、間がいいんですよ。ルミナスウィッチーズのジニーちゃんもこの台詞があり、こちらも非常に萌えでした。


「私が「お兄さんと寝た」って言ったら… 圭ちゃんどんな顔するかなぁ…❤️ 」かぐや様は告らせたいUR 第10話

圭ちゃん……………………好き。


「薔薇の香り〜!」乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 第11話

ローズハリケーン、一番好きな必殺技かもしれない。気の強い金髪縦ロールのお嬢様が撃つし、バラの香りするし……。


「ぺん!」トモダチゲーム 第11話

お尻叩く音を表現した台詞です。仲良しでいいね。


「愛、籠めてよ。」    ヒロインたるもの 第11話

早見沙織さん演じる中村千鶴がぶちぎれる過程を追った神アニメの神回なんですが、気持ち悪いオタクくんの気持ち悪い台詞が導火線として良すぎたので選びました。OPでイケメンたちが俺様風に「どっちのkissか選べよ 束縛させろよ」と歌っているのもイイ感じに効いてて良い。


「なんだ、まだいるじゃない。人類…」ブラック★★ロックシューター DAWN FALL 第12話

ブラックロックシューター流せばいい感じになると思うなよ~?と構えてた最終回ですが、すんごい力技で押し切られてまあ名作でした。というなんちゃって名作感を讃えるために何かしら台詞を拝借しようとしたときに一番いいなと思ったのがこれで、今思ってもちょっと微妙ですね……すこし寂しさを感じる辺りは好きです。

 

「おわり」かぐや様は告らせたいUR 第13話

おしまい、で終わる話が好きで、ultraromanticという派手な名前に相応しい派手なラストを飾るのがこの素朴な言葉というのがグッと来て選びました。


「いつもナイスでしょ」バーディーウイング    第13話

ナイスという言葉の響きが気に入ったので、このクールは特に「ナイス」を使ってアニメを褒めました。そのきっかけとなったアニメの最終回にこの自信たっぷりな台詞が出てきてくれたので嬉しかった。


「ミカンさんがかわいい」まちカドまぞく2丁目 第12話

台詞ママ。


「ロス先生に会いたい…」魔法使い黎明期 第12話

ロス先生ロスの視聴者を代弁するかのような台詞でしたね。ロス先生に会いたいよ……二期欲しいよ……。

 

「セクシー教師、エリカで~す」カッコウの許嫁 第11話

この台詞がHNに乗ってたらセクシー教師エリカなわけねーだろwとツッコんでいただけるんじゃないかなと思い選びました。恥を知った方が良い。

 

「僕は勿論肯定です。」ようこそ実力至上主義の教室へ 第2期 第1話

こういう肯定の意思表示の仕方があるんだ。今気づいたけどどうでも良い部分でストレートすぎるくらいストレートな台詞が好きなのかもしれない。


「月しか見えませんね~」可愛いだけじゃない式守さん 第12話

月が綺麗ですねというお約束の台詞をこねてこねてこねくりまわしてめちゃめちゃロマンチックになってて良かった。画面もそんな感じで。


「妹…」異世界薬局 第1話

妹を使った一番シンプルな台詞オブザイヤー受賞です。


「三竦みだ!」オリエント淡路島激闘編 第13話

二期になって急に学園モノが始ったオリエントの、クラス内勢力図を冷静に分析した武蔵君から出てきた名台詞。武蔵君のコミュ障ぶりがマジでいいよな。たぶん個人的にはぼっちちゃんよりハマってたとおもう。


「一番強いやつでぇ~!」エンゲージキス 第3話

なんでおれこれ選んだんですか?

という疑問があったので観返してみた。エンゲージキス、このクールで全部のアニメコインを賭けてたんですけど最初の内はそこそこ不安があって、でも三話まで観て面白くなりそうだな?という確信が芽生えたのがとても嬉しくなりそのテンションのまま選んだのを思い出しました。なんでこの台詞だったか、というのは多分「一番いい装備を頼む」を思い出してフフッとなったからですかね。インターネットやめたい。

 

「ふう…はい、おそまつ〜」エクストリームハーツ 第2話

気の抜ける感じがナイスだった。


「アニウエ~…」異世界薬局 第2話

なんだこのカワイイ生き物……となってしまうくらい鳴き声感のある台詞で良かった。


「わんこ宅配び~ん」森のくまさん、冬眠中。 第3話

ノリの軽さと僧侶枠の卑猥さの両方と馴染むパーフェクトな一言。あの短い尺でこれがあるのとないのとだと視聴感がだいぶ違うな~と感じ選出。短いのも好印象。

 

「すなわちッ 制 空 権!」金装のヴェルメイユ 第3話

これ以降制空権先輩というあだ名がついてしまうくらい強烈な台詞。制空権先輩が一番萌え萌えで一番好きなキャラでした。


「ギュッと魔力溜めときな!」金装のヴェルメイユ 第3話

前の台詞があまりに面白すぎたのでより馴染みやすいものに変えました。気合の入るいい台詞ながらも軽さがあり、こちらも気に入っています。

        
「顔文字、つけた方がいい?」異世界おじさん 第3話

こういうどうでもいいことにいちいちお伺いたてるカワイイ後輩感が出て印象イイかな?と思い選びました。恥を知った方が良い。


「ふむふむ!」連盟空軍航空魔法音楽隊ルミナスウィッチーズ 第4話

 シンプルに萌えすぎ!でしたわね。ルミナスウィッチーズってアニメっぽい台詞に生感出すのがめちゃめちゃ上手くて、ふむふむなんて日常生活で聴かない濃さのある台詞なんだけどすごい自然で萌えが身体中に浸透した。


「ハニワ好(ハオ)」邪神ちゃんドロップキックX 第4話

これで笑ってしまうのはさあ……恥だけど仕方ないじゃん。深夜テンションかな?と思ってたけど翌日HN見たときに普通にニヤついちゃった。邪神ちゃんの勝ちでいいよ。


「ウワ蟹がまっすぐ歩いてる!?」 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅣ 第2話

蟹が真っ直ぐ歩いてくることにそんな違和感感じる?

 

「直進する毛蟹でも見たの?」てっぺん!!!!!!!!!!!!!!! 第5話

の直後にこの台詞が出てくるのは面白すぎるんだよな。てっぺん五話はそれ抜きにしても面白いですが。


「ハニワにされたら 笑えないよ!」デジモンゴーストゲーム 第36話

ハニワ好(ハオ)の尾を引いていたのかもしれない……。ハニワにされたら気持ち的に笑えないしそもそも表情筋がないから笑えないよな、というとこにフフッと来た記憶があります。朝のテンションやね。


「給水タイムにしま~す」シュート! Goal to the Future 第5話

勢いすごくて息継ぎのタイミングがないから給水タイムが欲しすぎるな~ということを思い選びました。ミミアロマってこういうとき効くのかな?


「丁寧語でなくて、大丈夫ですよ」エクストリームハーツ 第5話

品の良さがいい。

 

「水をもらうぞい」異世界薬局 第5話

多分「ぞい」がウケたんだと思う。

 

「ほら もっと加速するぞ」ようこそ実力至上主義の教室へ 第2期 第6話

島耕作のコラの「ギアを一つ上げていくぞッ」を思い出し、ダメだった。

 

「きょうだいは嫉妬なんてしない!」継母の連れ子が元カノだった 第6話

力強さに感動してしまった。このアニメが売りにしているきょうだいという関係自体はまあまあ味があり良かったですね。


「企み~ノタウロス!」ちみも 第6話

このHNにしていた頃フォロワーさんと会う機会があり、「企み~ノタウロス!です」と自己紹介することができた思い出の台詞です。選んだ理由はくだらなくて面白いからです。


「てか、監督も女性に興味あるんすね」シュート! Goal to the Future 第7話

合宿回で監督との気持ちの壁が氷解してからさらにグングン面白くなっていきましたね。部員たちとはしゃぐ監督のシーンはどれもこれも嬉しいものでだったけど、男子高校生らしい下世話なこの一言が気に入って選びました。「監督も人間なんだ…」みたいな。なんだと思ってたの?

 

「悪くなかったな…」邪神ちゃんドロップキックX 第7話

この日誕生日だったのでこのクールお気に入りアニメである邪神ちゃんからなにか一言いただけないかな、と選んだ台詞がこれです。むちゃくちゃやった帯広編観た後の俺の気持ちにも沿ってたし、だら~っと欲のまま生きてる自分を肯定してくれるような広さがある、ような気がしています。


「ちゃんとオタクを頑張って、リクエスト考えるぞ!」神クズ☆アイドル 第8話

たしかに、オタクにとって欲深くなるって大事かもなと思ったので選びました。「あれしてほしい」って思えるくらい真剣に向き合いたいね。

 

「ジャストなはず!」シュート! Goal to the Future 第8話

台詞が結構ツメツメなんだけど、聴こえなかったり取りこぼしちゃったりとかはなく、勢いを殺さずスパーっと走り切れる脚本がすごい良くて、この台詞は特に収まりが良いなと思いました。いま口に出してみてもいい音してますよね。


「出番来たわよ~!」オリエント淡路島激闘編 第19話

二期になってマ~~~~ッジで出番のなかった服部みちるちゃんが「出番きたわよ~!」って言うもんだから期待と面白さが混ざって完全におかしくなっちゃった。結局ほとんど無かったけど。


「これは乱ですの。全てをやり直す!」    邪神ちゃんドロップキックX 第8話

何がおきているのか全く把握できてないくらいのむちゃくちゃぶりで混乱してたんですけど、「これは乱ですの!」って言われるとまあ乱れに乱れてるしなと納得してしまうし、白紙に戻そうとするのも頷けるよ。

 

「まる、じゃない゛!」ラブライブ!スパースター!!    第7話

そんな……まるじゃないなんて……

千砂都さんからまるじゃない判定をもらうって結構ショックだな……ということに気付けた一言でした。


「浮気でしょ!」継母の連れ子が元カノだった 第9話

9話は二人が付き合っていたころ、どのようにして付き合い始め、そしてどのように別れたのかが観てて恥ずかしくなるくらい甘じょっぱく描いてくれました。こういう羞恥心をチクチク呼び起こす刺激的な部分はハッキリと魅力だなと思います。結女さんの思い込みの激しさが悪い方に作用していく過程は観てておかしかったです。


「ラッシュ!ラッシュ!手当。」異世界迷宮でハーレムを 第9話

めちゃめちゃ真面目にハクスラやってる途中で、完全にコントのテンポでこれが来るからなんか間違った世界に迷い込んじゃったのかなと思った。攻撃の合間に回復が出来るから無限に殴れるぜ~という強化されたことの描写だから一応真面目に描いているのか……?


「ちみもでいく」ちみも 第9話

鬼神家のとっておき、ちみも――。

十万円を巡って公職選挙法違反が堂々と横行する本エピソードは作中屈指の汚さを誇ります。人の業とはかように見るに堪えないものである……となることがなかったのはやはりちみもでいってくれたおかげでしょう。「ちみもでいく」、まさしく最終兵器に相応しい力強さと、ひらがなの形や音のもつ柔らかさを併せ持つナイスな台詞ですね。このバランス力が地獄での裁定においても役立っているのでしょう。安心して地獄に行けるね。


「こいつも…遊佐だ…!」ラブオールプレー 第21話

いや、遊佐じゃないよ。

と思わず放送時にツッコんでしまった。本当に全然遊佐じゃなかったし。多分ハイになっちゃってたんだと思います。

 

「直置きかよ! 」異世界迷宮でハーレムを 第10話

ゲームだとポップした生鮮食品が床に直置きされてても何も思わないけど、実際ゲームっぽい世界の中に入ると確かに直置きは気になるよな。 

 

「あのスイカ1個はついでだ」 はたらく魔王さま!! 第9話

イカ1個をついでで盗んでいってそれが枷となり捕まってしまうバカっぽさが妙にリアルで良くて、その描写が持っている面白さを取り逃さないよう拾う台詞が配置してあるのも上手かったです。

 

「たこ高いから~」ハナビちゃんは遅れがち 第10話

だからといってたこ焼きをたこ抜きにしていい理由にはならんのよ。

 

「こ~の三番目の虫め!」エンゲージキス 第12話

アヤノさんとシャロンさんが仲良しだとめちゃめちゃ嬉しいよな?

いや、仲良くはないんですが……でもいがみ合いながらなんか息が合ってる、って関係ってすごいおいしいですよね。最終話までここを見せてくれたのがやはり信頼のおけるアニメだ……と思いました。

 

「大きくなった!」オリエント淡路島激闘編 第23話

剣だったか敵だったかがおっきくなったことに対するリアクションだった気がする。決戦を前に素朴さを忘れない良さ、まだ少年なんだよな~という実感がありますね。

 

「春雨じゃ ぬれていく!」アオアシ 24話

いや~やられました。アオアシ24話は2022年で一番キた最終回かもしれないです。

Bから急に濃密な一条花さんが始まって訳も分からないままEDを迎え、いやこのEDがさらにすごくて逃げ場が無かったです。「春雨じゃ、濡れていく!」という台詞だけを抜き出してもめちゃめちゃカッコいいい。完全に”観た方が良い”アニメです。

 

「うん そうしてもいい」ちみも 第12話

2022年でいちばん優しい台詞。愛というにはふわっとしすぎているけど、そのために何にも縛られずただ温かさがある。鬼神家と地獄さんが辿り着いた場所に相応しいものだったと思います。

 

「ずっとナレーションだな…」遊☆戯☆王ゴーラッシュ!! 第27話

アニメ制作回、年話内定の話数です。

メェ~グちゃん好きが高じて(というだけではないのだけど)アニメを作ってしまうチュパカブラのチュパ太郎の負担がどんどん増えていく過程に涙したり、最初はド下手だった遊飛くん渾身のカットが放送に乗ってそれを遊飛くん自身がいちばん楽しそうに観ているのに涙したりと非常に感動的な内容でした。

というのを置いといても、丁寧に制作過程を追った描写だったり、TCGアニメならではのカードゲームの内容の構成を考えるセクションを描いていたり、そもそも出来上がったものの個人製作感がめちゃめちゃよく出ていたりしているのがとっても楽しい話数だったね。この回だけ観るのもアリだよ!

 

「"アイニード…モア…パゥワァ…" 」陰の実力者になりたくて 第1話

たっぷりためた英語の台詞でキメてくるから思わず選んでしまった。もちろんカタカナ表記です。

厨二感を茶化しつつ、でもただギャグとして消化せずにアニメーション自体はカッコよく仕上げてきているから「カッコいいけどダサくて笑える」という美味しい部分の両取りを出来ていて上手いですね。強者揃いの水夜で一番楽しみにしていたのは実は陰実だったかもしれない。陰の実力者そのものじゃん……。

 

「さみしくない?さしみほしくない?」魔入りました!入間くん 第3期 第1話

入間くんみたいなアニメを森脇監督がやっていてそれがNHKで放送されているから全国どこでも観れますよ、というのがもうほぼほぼ福祉なんですよ。アオアシもだけどいいアニメを流してくれますね。

入間くんもとうとう第三期です。三期になってもウァラク・クララさんは可愛いですね~「さみしくない? さしみほしくない?」まず音が良いし朝井彩加さんの声に乗ってとても心地よい。さみしかったよ~という気持ちをおかしみたいに楽しくて甘い気持ちに変えてくれます。ハッピー!


「あっちゅ~い…」不徳のギルド 第2話

当該シーン観返したんだけど「デケェ!」以外の感想が消し飛んだ。


「ってか…ホーリーホーリー言い過ぎたべ、草!」シャドウバースF 第28話

前シリーズがまあまあ良くなかったんですがその反省が活かされて今シリーズはおもろいです。特にギャル周りなんかは無視できない火力がある。

28話もギャル回でした。光の元闇落ちダウナーギャル、ツバサ先輩が先代の黒ギャルとのバトルを通して闇落ちした過去と真に決着をつける、というのが謎に良すぎる作画で描かれるので見どころしかない…………。黒ギャル先輩、闇落ちしてんのかなと思ったらどっしり構えていて実に先輩ギャルらしい方でした。そんな先輩のギャルギャルしさがよく出ていた台詞を選出。結構気に入ってます。


「カワイイポニーテールだぁ 」アイドリッシュセブン Thurd BEAT! 第16話

顔がいい男たちがイチャイチャしてんの好きなんだよな。お話の展開が結構辛めなのもありオアシス的なシーンです。ていうか辛いシーンと交互にして投げてくるの普通に分かってて振り回してるよね……まあ振り回されるの楽しいからいいけど……。


「俺もはしゃいで、これを激写しました。」VAZZROCK 第3話

結構長く付き合ってきたツキノシリーズですが、今作めちゃめちゃ面白いですね。出そうとしている台詞の生っぽさがちゃんと出ているというか、これまではそういうあえて気取らない台詞を置いてはみるものの味がないだけだった……という感じになっていたので。


「うん、それはホントに是非です」VAZZROCK 第3話 

だからこんな台詞なんかにも味がある。いやここにある味は前までのシリーズにもあったか……というかこれまでツキノシリーズを追ってきた理由がありますよね。こんな素すぎる台詞なかなかかけないよ。

   
「いってらっしゃいって、して」夫婦以上、恋人未満。 第3話

この、甘える感じが非常にたまらんですな!

放送前は全然気にもしてなかったんですが、ルックの作りこみでまず惹きつけて、次いでヒートアップしていく渡辺星さんとの夫婦生活から目が離せないようにする……という流れにまんまと乗せられてしまいました。おれは渡辺星さんに勝ってほしいです!


「酒ぇ!」ピーター・グリルと賢者の時間 Super Extra 第4話

何飲む?って聞かれて「酒ぇ!」と即答する剛さ、地上最強の男の地上最強の妹に相応しいひとことで良かったです。妹なのがいいよな。


「お兄ちゃんズにお任せだ」VAZZROCK 第5話

おれも兄として気高くあろうとしていたし、今もそうなので、グッとくる回でした。


「ゆとりがあるな 」ニンジャラ 第44話

たま~~にいい回が来るので侮れないニンジャラ。44話は大人組が大人組とつるんではしゃいでいて楽しそうでしたし、フッと表面に出てくる大人っぽさ、それなりに人生を経た人の視点から出てくる台詞、が魅力的ですよね。この後のうんち回は台詞選出はなかったものの年話入りです。


「や やわっこ…」不徳のギルド 第6話

柔さと重さ、両方出てるナイスな台詞だと思います。


「義に欠けるよ~!」4人はそれぞれウソをつく 第5話

大佐は義を何よりも尊ぶのだ。

 

「序文…」4人はそれぞれウソをつく 第5話

濃い設定をこねくり回しためちゃめちゃ濃いボケが続くなか、こういった小ボケも頻繁に挟まれるんですけど、小ボケを拾ういわば小ツッコミの収まりがすごいツボでした。日常会話っぽさ?


「可愛い妹のポコア」不滅のあなたへ 第2期 第4話

あにあに~!はノーベルアニメの妹賞とれる。

子安さん演じるボンもめちゃめちゃ良いですね。キャラ単体で自立できるくらいごついキャラなんですが、あの兄があっての妹であり、またあの妹あっての兄なのだな~と兄妹関係が見えるのですごい。

 
「どうだろうか」VAZZROCK 第7話

硬ぇ~~!硬いのに自然だ。素晴らしい。


「そんな陣形、ないよ」「艦これ」いつかあの海で 第3話

「時雨、二人だけの警戒陣ね……」

「そんな陣形、ないよ」

「(笑顔)いいのよ……」

2022年トップ意味の分からない会話です。三話、五回観てるんですが何がいいのかいまだに意味が分かりません。いや、本当はよくないんだけどそんな陣形ないよでバッサリ斬られたショックを隠そうと誤魔化してるんだろうか。戦艦のプライド厄介だな……。

 

「でもできてる!」VAZZROCK 第8話

だから良いんだ!というシンプルに力強い肯定、元気が出ますね。素朴な台詞の強みです。

 

「むね~ 」ある朝ダミーヘッドマイクになっていた俺クンの人生 第7話

おっぱいのことです。おっぱい以外の意味を一切含まない台詞で、非常に良いと思いました。


「でっか!森じゃん」アイドリッシュセブン Thurd BEAT! 第22話

森って単語の強さに引っ張られての選出。そもそもデカいものが好きで、森と形容されるとなるとね。


「まろび出てまいりますわよ~!」ピーター・グリルと賢者の時間 Super Extra 第8話

インターネットお嬢様ってジャンルになるんですかね?語尾とかは上品にするんだけど発言自体はちょっとお下品にするやつ、逆ばってしまって話題に全然触れてないんですがめちゃめちゃ好きです。その系譜ですね。

日曜ド深夜、翌日月曜なのに夜更かししながら浴びる下ネタってめっちゃ気持ちよくて、加えて下品なエルフのお姫様が大暴れしてるともっと楽しくなれます。

 

「肉焼けるんで 集合!」シャドウバースF 第35話

アニメキャラが仲良しだと嬉しい!

中ボス波瀬浦ハルマを下しなんかいい感じになったセブンスフレイム他、イツメンを集めてのリゾートでわいわいする回、気を抜いてたらすーぐ新しい女女カップルを作るしもちろんメインカプの供給もある。FってFlameじゃなくてほんとうはFemaleのことらしいです。もちろん硬派な俺はそんな軟派なシーンから台詞を選びませんでした。

肉が焼けるから集合をかけて、そして集まってくれる。天竜ライトくんたちがしっかりとその人たちと向き合ってきた結果実現したリゾート回なんだな~としみじみ思ったりしてました。本当です。女女ばっか見てるわけじゃないんです。


「たぁこぉ!」4人はそれぞれウソをつく 第8話

「たこ!」でも「たこぉ!」でもなく、「たぁ⤴こぉ⤵!」のイントネーションがあっての選出でした。このころから大佐のことがめちゃめちゃ好きだな…となって来た。


「21歳差の妹かぁ…」宇崎ちゃんは遊びたい!ω 第10話

普段妹妹言ってるけど21歳差あっても愛せるんだろうか……っていう疑問がふっと湧いちゃったんですよね。そんな弱さを戒めるために選出しました。21歳差あったらもうなんか妹というより、なんて言うんだろう、姪って言った方が近くないだろうか。

馬鹿。21歳差でも妹は妹だろ。もっとしっかり向き合え。


「動くな。 いや、動きたいなら止めないが、きっと痛いぞ。 いや、痛いのが好きなら止めないが。」VAZZROCK 第10話

最長です。百鬼夜行のことを思い出してクラクラしながらの視聴だったけど、なんだかんだ面白かったね。久慈川悠人さんめちゃめちゃボケまくるけど打率高くて出て何かしゃべるたびに笑ってた気がします。


「ほら犬~?お手。」ある朝ダミーヘッドマイクになっていた俺クンの人生 第10話

犬のことを犬と呼ぶ加点が入り、選出。音声作品ということもありなかなか輝いてる台詞が多かったですね。


「ねぇ…? かんたんにちぎれちゃうんだよぉ… 」農民関連のスキルばっか上げてたら何故か強くなった。 第12話

田村ゆかり演じる悪い妹が可愛いかったので選びました。

飢えで死んだと思われた義妹が復活してきたというだけでもかなり嬉しかったのですが、なんかすごいグレてて困ってるアルくんも良かったですね。


「パンパンのリュック」4人はそれぞれウソをつく 第10話

旅行を楽しみにしている気持ちが詰まってて良い。おれもリュックをパンパンに

しがちなので。リュックじゃなくてもランドセルとかもパンパンにしてました。

久しぶりのポケモンにハマっていて、少年時代の情緒が思い起こされたのもあっての選出でした。

 

「わたし、ずっと受付してるから!」転生したら剣でした 第12話

いやまあ受付嬢が私ずっと待ってるからの言いかえでずっと受付してると言うのは分かるんだけど、実際聞いてみるとめちゃめちゃ可笑しかったですね。縛り感?なんでその立ち位置にこだわってるんだろう……みたいな。なかなか言語化できないですが、いま文字だけをみてもフフッときます。


「白い!」陰の実力者になりたくて 第12話

背景が白い空間が出がちな異世界ファンタジーアニメ、背景の白さにこのようなストレートなリアクションがあったのはなかなか記憶にないです。白さしかないから、「白い!」としか形容できないんですが、その無味すぎる空間に対して短く太い一言でバシっと来たのが気持ちよかった。

 

「そんなことより!」4人はそれぞれウソをつく 第11話

ケロロ軍曹の次回予告のフォーマットが「ケロロの雑談→そんなことより!→サブタイ読み上げ→てことで、どすか?ゲロゲ~ロ~」というものなんですが、アニメで「そんなことより!」が出てくると必ずツイートするくらいこれを気に入っておりまして。

この台詞は翼(剛)が今まで嘘ついててごめんと謝ったことに対する返事なんですが、このアニメの一つ大きな嘘の告白を「そんなことより!」で流してしまえるパワーを讃えての選出です。この後怒涛の展開が続くのもあり、台詞の持つ強引さが良く作用していて良かったです。

 

3.結び

どうしても好みが出たり、リアタイ可能かどうかで偏る部分は出てくるのですが、10選のようにいいアニメばかり集まるわけじゃないので「そういえばこんなセリフこんなシーンあったな」なんて懐かしい気持ちになっていただければ幸いです。

自分でもなんでこの台詞を選んだんだ……となるようなものもちらほらあって、当の本人が二度三度観返してようやく思い出すくらいだから多分他の人はもっと謎に思うんだろうな、という意味不明なところが気に入ってます。

もちろん、ルールでの縛りがあったため、収穫したもの以外にもとっても魅力的な台詞に溢れていて幸せでした。来年もいっぱい収穫したいね。

だってひみつきちって・いったじゃん!・やくそくとちがう

『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』の話をしようとしたら秘密基地の話になってしまった!

 

個人的な思い出によって形成された秘密基地観でしゃべっているので、変なこと言ってるかもしれませんが、まあこれくらい個人的な感想の方が公開する価値もあろうと思い書きました。それは違うんじゃない?みたいなのがあれば面倒でなければ教えてください。

 

 

だんぜつが・いきいきと過ごす・よすが

秘密基地作ったことありますか?

僕は中学生くらいまで結構作ってました。記憶にあるだけで12個ですね。1年に1個は作っている。

この10個以上の秘密基地にはしょうもないものも入っていて、例えば友人宅の壁と塀の間に簡易的な屋根を敷いて椅子やテーブルを置いたものがある。友人宅から無限に食料を調達できたので無限時間居座ることが出来た。これはしょうもない秘密基地の中でもかなりマシで、LEGOブロック製の立方体(一辺20㎝程度)なんかも秘密基地認定をしている。非常に丈夫で踏んでも壊れなかったが、勿論僕自身が入ることが出来なかったので黄色いLEGO人形を分身として送り込んでいた。

しょうもないシリーズの中だと気に入っているのが、机の下の空間を椅子で蓋をしたもので、これは(実家が机などを処分してなければ)現存する最古の秘密基地である。椅子に覚えたばかりの字で「ひみつきち」と書く気合の入りようだったが油性マジックででっかく書いてしまったために母にひどく叱られた。小さい頃泣くほど叱られた後にもらえたアーモンド入りのチョコレートの味と一緒に覚えているので本物の記憶です。

 

しょうもない話はどうでもよかった、DIYの話です。いや秘密基地の話か。

 

4話より、完成したジョブ子の借間を眺める3人。

ここ、すごい良いですよね。アイテムの選び方や置き方、出来上がった後にのんびり眺めている三人。秘密基地感にあふれている。

宿主に断りを入れることなく好き勝手に侵略して後で怒られるの含めてものすごい秘密基地加点が出たので思わず「秘密基地じゃん!」と叫んでしまいました。

 

こうした形態の秘密基地は一般に長生きしない。叱られるので。

しかもこの後せるふちゃんの口から「秘密基地」という言葉がしっかり出てくるもんだから、たまりません。

 

「あ、ひみつきち…」

「秘密基地?」

「作りたいなって、木の上に!」

 

作りたいよなぁ木の上に秘密基地……ハックルベリー・フィンとかさ、憧れるじゃん。

僕もツリーハウス作りに参加したことがあるんですよ。子どもだけだと危ないので、大人の指導の下で。まあまあしっかりしたものが出来たので満足だったんですけど、やっぱり秘密基地感はないわけです。

「じゃあ秘密基地の秘密基地感はどこからくるんだろう」と考えたんですが、これは空間の”自分”の濃度からくるのかなと思いました。場所選び、そこに置く調度品、誰に存在を明かして誰を呼ぶ? そして作る上で誰にも配慮しないところとか……全部”自分”で出来ていて、ものすごく内に向いた空間を、広い世界から切り取って構築すること。もう世果てと言っていいかもしれないくらいの世界との断絶がある。

断絶があるから秘密が守られるのだし、安心して過ごせるし、また断絶は許されないので暴かれたり世界の修正力を受けたりします(勝手に土地を使ってしまって叱られる、など)。

それでいうと、ツリーハウスは100%自分の(あるいは自分たちの)ものでできた空間ではではないから、秘密基地感は湧いてこなかったのかなぁ……と。

 

だいすきな秘密基地とDIYって・あいしょうが・よさそう?

ここではDIYを「自分の作りたいものを自分で作る」くらいの意味としますが、DIYの中で秘密基地って言葉が出てきたときに「秘密基地作りって究極のDIYじゃん!」と思ったわけです。まあ究極かどうかは知らないけど、秘密基地作ろうと思ったら多少なりともDIYはする。

どちらかというと個人って性格が強いDIYは内向きの創作で、ここにいわゆる大量生産にはない”温かみ”があるのかなと。大量生産の品だって見た目にも機能にも、そして生産ラインに乗せるためにもたくさんの人間の工夫があるけれど、DIYはその工夫を個人が担った濃度が高い、という点で温度を感じやすいのかもしれない。

この個人の濃度ということを思うと、やはり秘密基地作りはDIY精神そのものじゃんという気がします。

 

どきどきわくわく・いっぱいあったのに…・ゆくえふめい

4話、登校中にツリーハウスを作ろうという提案を聞いたせるふ。

ツリーハウス作りと聞いた朝、どきどきわくわく、興奮が収まらない躍動感、小野寺蓮さん(ですよね?)のパーフェクト・カットです。僕にもこんな朝があり、そして授業中のノートは設計図(という意気込みで作った落書き)で埋め尽くされ、放課後ダッシュで教室を飛び出ていくのです。

 

 

しかしこの話数以降、このわくわくを感じることは少なくなっていきました。

DIY9話ではツリーハウスの材料が処理場に消えてしまい、10話ではその材料集めにDIY部員たちが走ります。解決法としては、町中から要らない材料を集めようというものでした。

ここでは町民たちの”善意”でもって材料が提供されます。秘密基地の原理原則で考えると、これらの材料で作られた秘密基地は材料提供者の居場所でもあります。

まあ言ってる意味は分からなくても、例えば壁を見たときに「ここの板はだれそれからもらったアレのアレだったなあ…」みたいな思いが頭をよぎるのは十分ありうるかなと思います。なんせ善意で提供してくれた材料なので『supported by ○○』がついてるわけですよ。そしてここにはあまり秘密基地感がありません。

そもそもツリーハウスを作る目的としては「部員獲得のための目立つ作品を作る」というものだったので、これがより大勢の居場所になりうる可能性を持って作られることには非常に納得がいきます。実際、せるふとぷりんとの思い出の詰まったベンチも材料として提供されていて、これはツリーハウスに組み込まれるわけですから、DIY部のツリーハウスはぷりんの居場所となり、そしてぷりんはこの話数でDIY部に合流します。

実現可能性の高い手段、地に足のついた話運びも本作の魅力であるので、こうした現実的な解決がなされることはしっかりとした強みです。

それに誤解していたのだけど、「ツリーハウスを作る」のであって秘密基地とは言ってなかったかもしれないね…………

 

だって秘密基地って・いったじゃん!・やくそくと違う

でも秘密基地って言ったじゃん!

DIY部4人の話としてはイイ……と思うものの、あまりワクワクはしないですね。

せるふちゃんのアイディアスケッチがバサバサ実現可能性で切られていったり、採用されたのは部員たちの出した欲しい要素だったりしたのも結構気になってしまった。

絵づくりがものすごく魅力的でわくわくするアニメなので、ここに感じていたものがものづくりのわくわくと重なる部分を楽しみにしていたから、やはり少し惜しいなという気持ちがあります。

 

あと11話でやっぱり秘密基地作りって言ってるじゃん!

 

だったらみせてもらおうじゃん・いっぱしのひみつきちと・ゆうものをな!

diy-anime.com

ついに“秘密基地”が完成した。せるふたちは、1学期の終業式の後、完成したばかりの秘密基地で、ささやかなお祝いをする。

 壁には隙間が空いていたり、床は少し傾いていたりと、出来は完璧ではない。それでもいい。仲間たちで、自分たちの力で、夢を作り上げたことに、皆、深い満足感に満ちている……。

 そして、夏休み。留学期間を終えたジョブ子は、せるふたちとの再会を誓い、アメリカに帰っていく。ぷりんはせるふを、DIY部へと誘う。ぷりんは、秘密基地にはまだ足りないものがあるといい、せるふとふたりだけで作業を始める……。

「秘密基地に足りないものがある」……? なるほどね……。

 

だそくだけど・いいたいこと・よんこくらい

  1. DIYって内向きの行為だから、大量生産/個人製作だったり最新技術/従来技術といった対比では輝き辛いんじゃないかな。もっと個人の工夫に焦点を当てて内VS内の対比にした方が好みだった
  2. もちろんこの対比をメインにしているわけではないことは分かってて、ここに橋を架けることが演出になってるんだよな。ぷりんはここを通って合流するのだ。
  3. これは実現可能性という点で却下されそうなんだけど、材料が足りない展開にしても「アイディアがあふれちゃって」足りなくなった方がカッコイイよな。
  4. 部室を材料にするのは非常にスマートだった。というか10話は部室解体とそのためのOB訪問の話になると思っていた。なぜなら居場所作りのためのツリーハウス作りだから。

 

 

 

アニメ2021

「アニメ全部観る」って言葉がインターネットには転がっていて、全部? 観てるんだろうか本当に。と思うなどした1年だった。何をしたかというと、アニメを全部観ようとした。

数えあげてみればTVアニメを286本、アニメ映画を42本観たので結構頑張った1年だった。これは過去作も入っているけど今年の新作は大体観たと思う。少なくとも観ていない方を数えた方が圧倒的に早い。ここに加えて配信限定アニメだったりアニメMVアニメCMだったりを観たのだから本当にアニメ漬けの1年だった。

いつの頃からかアニメから台詞を頂戴して毎週Twitterアカウント名を変えたりするようになっていた。1週間以上変えずにアニメの台詞を着ていると饐えた匂いがするようになる。次を見繕うために早くアニメを観なければと焦る。

「アニメをみるのが下手なりにとにかく数を観よう」としたのが動機だった気がする。気がする、と言ったのは日々の時間の多くをアニメに割き、アニメを思い、万物をアニメに例え、自我のほとんどをアニメに預けた暮らしをしていており、今この私というものの輪郭はぼんやりと定まらず何を思ってアニメを観ているのか分からないからです。これ、この文章はいまアニメが私を通して書いています。

規則正しい生活習慣と健康、そして研究の進捗が失われましたが、面白いアニメは面白かったしなによりものすごく気持ちよくなれたので観てよかったなとは思った。このままこの快感までもが失われることが惜しいので、いくつか思い出を残しておきたいと思う。ネタバレをします。

 

アイドルランドプリパラ OP「OPEN DREAM LAND!」(追記)

本編の1話と0話も無料公開されていて、おかえりと言いたくなるようなプリパラ感に泣きそうになってしまった。プリパラが人々の記憶から消え去ってしまった世界という設定も、今この時代に観るから感じるものもあってよい。現実と切り離された時空の中で、アップデートに失敗したプリパラはあの頃と変わらず存在している。

と、そんなことよりアイドルランド上空に封印されている夢川ゆいがどうしても気になってしまう。夢川ゆいが持つその莫大な夢パワーゆえに現実世界へのゲートを維持するための柱となってしまうとは……。

 

本編の話ではありませんでした。OPアニメがめちゃくちゃよい、という話です。

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コンテ演出吉原達矢の、今までのプリパラでは見なかったそれっぽい煙や爆発があってカッコいい。一方でキャラクター紹介のところなどはしっかりプリパラ感を残しているのはさすがだなと思った。58秒あたりからのソラミスマイルとドレッシングパフェの、ライブパフォーマンスを切り取ったカットはうっとりするほどリッチでよい(東堂シオンの顔はどの角度から見ても美しい!)。

65秒~あまりとらぁらのスカイダイビングからのカットひとつひとつが、そして次のカットへの変化がめっちゃダイナミックで良い。タイトルロゴが出るタイミングが完璧。いいアニメOPっていうのはタイトルロゴを出すタイミングを分かっているんだよな。

二人が地面に降り立った後には今後のストーリーを示唆するようなイメージを詰め込んできていて、情報の疎密のコントロールも良いと思った。

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巨大な女の子が泣いている手前で森を進むアロマゲドンの二人。どういうシーンなのかとても気になる。

というめちゃめちゃ素晴らしいOPなので初回どのタイミングで流れるんだろうと楽しみにしていたんだけど、1話でも0話でも使われなかった。2話の無料公開は3月らしいです。

 

他、OPとか

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タイトルロゴを出すタイミングが完璧なOPその2。全部いいんだけど57秒の線路からのグオ~って行くところからパッと静かにタイトルを映すところが特にいい。

 

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エモい青春映像オブザイヤー。色がいいですね……50秒からの古見さんが教室から出ていく~階段を駆け上がっていくところの映像的に動き出すところがお気に入り。あと星作ってるピースが一つだけ震えているところ。

 

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こちらの期待を超えてきてよかった。タイトル→サブタイトルを出すとこで一気に掴んでくるので良いのだが、YouTubeの動画では反映されてないので悲しい。

 

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復活の京アニTVシリーズ。トールとエルマのラップパートがたまらんすぎ。

 

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『大王饶命』OP。金色の使い方のセンスが良くてめっちゃゴージャス。

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ここ豪華さも派手さもやり過ぎで笑っちゃった

まだまだよかったのあるのでOPだけをまとめるやつやった方がいいなと思った。

 

Artiswitch

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あんまりにも話題に上らないので見逃しそうになってしまった。配信限定だとネットフリックスのArcaneが元気でよかったけど、YouTubeで公開されていて敷居の低いこちらも負けず劣らず良いのでドシドシ流行ってほしい……。

深夜アニメ視聴者にとって原宿はそこまで遠い場所ではない気がする。ここでいう近さとは自らそこに行けるかどうかという話ではなくて、原宿を舞台としたアニメに触れたことがある程度の親しみでよい。ちなみに自分がこの前原宿いったら人多すぎて鬱になりそうでした。

ともかく、原宿のカルチャーとアニメの相性は実際いい。画面が華やかになるし、奇抜に見えるアイテムの組み合わせだって自由自在だ。

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るるの生き辛さを象徴するようなファラリスの雄牛だって、ほらkawaii。(4話)

アニメのようなビジュアルを扱えるというのは原宿を舞台にした作品の強みで、段々と現実離れしたイメージの濃度が増し、やがて裏の世界へ、という誘導が短い尺で可能になる。そこに楽曲の力を借りたMVパートも加わって……とにかく濃密な10分に仕上がっていてよい。

特に気に入っているのは4話。身の回りのあらゆるものを好き、嫌いで分別していく〈るる〉のどうしようもない生き辛さ。その自分らしさを突き詰めた先の行き止まりが描かれた異色回。独裁スイッチを使うことでしか救われない人もいる、みたいな話をやっていて、最後るるが笑顔で傘を閉じることで自分自身すら閉じていく徹底ぶりは酷薄だが美しい。

 

EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション

これをシリーズの締めくくりに持ってくるのは狂人だろ、と思った。シンエバ無難すぎワロタになってしまったのも非常に困った。

下はめっちゃ困惑した気持ちにどうにか整理をつけるために書いたやつです。

o-zo.hatenablog.com

エウレカの声にウルスラグナが応えるかのように、ディスプレイに「GO」と表示されるあそこが大好きで~……

 

劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト

本気の本当に今年一番面白かったアニメって何って、まず思いつくのがこれ。これがあったせいで劇場アニメも全部(全部ではない)観る羽目になったのだから罪深い。オタクたちみんなみて語ってたから今更語ることなんてないんだけど。

TV版ってこんなに面白かったっけ? って観返したりしたのだけれどやっぱりTV版より断然よい。俺がスタァライトで一番好きなのは舞台装置なんですが、塔も線路も電車も、あらゆるイメージが繋がって、愛城華恋を乗せて上っていく、あの瞬間を求めてスーパースタァスペクタクルを何度も再生する人になってしまった。タワーでポジションゼロというアイディアはあまりにも質量がデカすぎるし、それが全身を貫く衝撃と、その穴を彼女たちに吹く風が通り抜ける……絶頂。あまりにも気持ちの良い映像。2021年いろんなコンテンツの終わりを観たけど、これをクライマックスに持ってこれたスタァライトが一等賞だと思った。

 

シキザクラ4話「家族/BROTHER」

僕がアニメを作るとしたら絶対やりたいことがあって、それが「30分ずっとカレーを作ってるだけの回」なんですが、このシキザクラ4話は伊勢うどんを煮込んで終わる回でかなり思想が近かった。

これまで3DCGでバリバリのかっちょいいアクションでやってきたアニメが急に作画でやるというサプライズも驚いたけど、やっぱり気になったのはこの構成だった。

伊勢うどんは1時間煮る!」「これだけ時間かけたうどん、絶対うまい!」

でタイマーで1時間測りながら伊勢うどんを煮る男二人、バカなんだよな。で、このぐつぐつ煮込んでる鍋をはさんで兄弟と思い出話をする。美しすぎる……。

ラストの台詞を書き出しておくのでこの美しさの一片でも持ち帰ってください。

吉平「さあ、煮えたぜ俺たちのうどんが」

~3分クッキングのテーマっぽい曲~

吉平「極太の面に甘辛のだしをかけて」

翔「タレ買ってきたの?」

吉平「作ったさ!」 

翔「ほお~」

吉平「ネギおねがいしゃ~す」 

翔「あいよっ!」

吉平「か~んせ~い!」 

翔「おお~! って太くない!? これ正しい状態なの?」

吉平「これが伊勢うどんなんだよ。これだけ時間かけたうどん、絶対うまい!」

「「いっただっきま~す!」」

~うどんをすする音~

「「マッズ~……」」

 

「自分だけの物語を描こう(保育士篇)」帝京平成大学 WebCM(追記2)

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企業CMでもアニメをよく見るようになりましたね。そんな中でも特によかったのは帝京平成大学のCMでした。走ってるとこのアニメーションが上手くいってて~とかではなくて多分

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こことか

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ここの、いかにもアニメアニメしい表現に弱点突かれたんだろうなと思います。曲のテンポとハマってて気持ちいいし、MVとしての満足感がある……女の子が可愛いというのも勿論ある……。

 

他、企業CMとか

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企業CMといったらもう三幸製菓ですよ。と言い張りたかったんだけど帝京平成大学CMが良過ぎたのでこっちを他に回すことになりました。周りが新海風のエモいアニメでプロモーションしてる中、三幸製菓は深夜アニメみてーなノリをずっとやってて好き。

 

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堀口由紀子はズルだろ~……と思ったら原画には小島崇史榎戸駿大久保俊介吉邊尚希田中宏紀錚々たるメンバーがそろっていて卒倒した。内容はあんまり分からなかった。

 

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最強のコンテンツ。

 

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背中の曲がり方にこだわりを感じる。

 

スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 6話「リヴァイアサンが来た」

単話で一番いいのを選ぶとしたらこれかなあ、気持ち良すぎて気を失いそうだった。撮影処理もってエモ~にするのが昨今の流行だと勝手に思ってるけど、細かい芝居付けやレイアウトがずっとパーフェクトだった。細かい部分はアニメに詳しいいろんな人が語ってるから今更おれが言えることなどないが、寝室~翌朝目が覚めるとこまでなんかは額に入れて飾りたいくらい好き。ロザリーの幽霊という設定を、あのバルコニーの1カットであそこまで面白くみせれるんだ、と感動した気持ちは今も鮮明に思い出せる。この色褪せないたった1カットが今の俺を生かすんだ。こういう出会いを得るためにもアニメは全部観た方がいいな。

 

セブンナイツ レボリューション-英雄の継承者-5話「跳梁-ピュシス-」

吸血鬼アニメが熱い今年にあっても素晴らしい吸血鬼アニメだった。

ところで「私、主体性のない女ですから」が口癖の女ってどう思います? ちょっと最悪ですよね。こんな女が、吸血鬼に血を与え、百合をやる。「だってあなたが欲しているんだから」とでも言うように……!(この口癖に隠された真意もとてもいい)

対して吸血鬼の方は「もうあなた無しでは生きていられない」みたいな態度で、だから舐められるんだよ。人に血をもらわなければ生きていけない生物、愛おしすぎる……。

アクションパート、吸血鬼の身体能力に任せたダイナミックな動きも良く、Cパートの艶のある吸血(未遂)シーンも素晴らしい。アニメを全部観ていたおかげで見逃さずに済んだぜ。大満足の1話です。

 

装甲娘戦機

TVシリーズで今年一番(この一番は本当の一番です)面白かったのがこれ。

今日から私はスナイパー……!? 日常を奪われ、その肢体に〝LBXユニット〟と呼ばれる戦術兵器を纏う5人の少女―― 〝装甲娘〟たち。選ばれし転移者である少女たちの使命は、多元世界をまたいで蝕み増殖し続ける金属生命体・ミメシスの掃討と殲滅。時空を超えて強いられた傭兵暮らし、それは世界の「希望」と「絶望」とを垣間見る命がけの修学旅行だった!

あらすじがまあ~よくあるやつだが順当に面白そう(おれはロードムービーが好きなので)だね、という第一印象を軽々飛び越えてきた。

全部の話数面白いのだけど、5話の京都回などは分かりやすく良い。メンバーそれぞれの世界にある京都は少しずつ違っている、という話の中で語られる銀箔張りの銀閣が、金色の金閣とともに蟹のような化け物となって登場、さらには銅閣までもやってくるという馬鹿馬鹿しいことこの上ない映像が映し出されるのだが、状況としては絶望的なのだから情緒がめちゃくちゃになる。実際焼け野原になりシンボルが怪物化しているという画は中々に恐ろしいものであり、「実際の聖地で物語を展開しリアリティを出す」のではなく「我々の世界との差異を強調することで説得力を出す」という使い方もいいアイディアだったように思う。

10話の総集編もTVアニメ総集編史に残すべき見事な出来だった。これまでの旅を振り返りながら、命がけの「修学旅行」を楽しむ彼女たちを見守る大人たちを見守ることで作品コンセプトを浮き彫りにさせるこの話は、なるほど総集編という形がピッタリだった。この構成の妙は総集編まで全部観なければ分からなかっただろうな……。

 

高野交差点(追記2)

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個人制作はそんなに漁れてないんですけど、やっぱりこれは印象に残りました。

三人それぞれの背景を描き切らない余白の感じさせ方は、情報量のコントロールがめちゃめちゃうまく、ピアス君は何にイライラしてたんだろうというところに自然と意識がむきます。ここに「この交差点で一連の出来事を見ている私たち」があって、という構造もいい。

ブレを強く残す速さの表現が面白かったです。速い動きをブレ指す表現はアニメでは珍しくはないんですが、これは遅い動きとのシャッタースピードの差を極端にすることで各々の速さが特徴づけられているような印象があります。このそれぞれ異なる速さの人物たちがある一点で交差する、というのがとてもいいですよね。

 

他、個人製作アニメ

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青春の一頁、にも満たない瑞々しい一瞬を詰め込んだ30秒。インディーアニメの名手(?)たなかまさあき(@shadyxx24)さんは今年も新作MVを発表していてそっちもめちゃめちゃ良い。

 

月とライカと吸血姫

吸血鬼に振り回された1年の締めくくりにみた激・オモシロ・吸血鬼アニメ。2021秋は他にも『ヴィジュアルプリズン』『吸血鬼すぐ死ぬ』の2作品の吸血鬼アニメがあり、そしてどちらも抜群に面白い。同じ吸血鬼を扱っておきながらネタ被りしないというのは驚きだが、この月とライカと吸血姫の吸血鬼という存在の扱い方というのは今年にあった吸血鬼アニメと比べてもかなり興味深かったと思う。

「吸血鬼→棺桶→ロケットの密閉性」と我々が吸血鬼に持っているイメージを宇宙技術へと上手に繋げている一方で、この「虚構的存在の吸血鬼ってこういうもの」というイメージからさらに、人と似た姿であり、そして人と何ら変わりない吸血鬼への差別意識を引っ張っていくのが秀逸。吸血鬼というレッテルを張られたイリナ・ルミネスクという少女の真実は、レフ・レプスやアーニャ・シモニャンとの交流によって明かされるのだが、このアニメの主軸となる個と個の描写がアニメ的にとても美味しいのがすごい。アニメ的に美味しいというのは、萌えということです。

作品を通してあった「虚構と真実」というテーマもとてもホットでよかった。いや、2021年で流行ったのは正しくは「虚構と現実」だろうけど、本作が扱っているのは私たちの歴史にあった宇宙開発競争、そしてその先にある新世界の話であり、私たちの住む現実の話をしていたのは間違いない。現実の中に溢れる虚飾、その下にある真実について。

まず記憶にあがる印象的な回は7話「リコリスの料理ショー」。イリナが宇宙に行くという一つの大きな山場だったが、視聴者がその天辺まで登れるようしっかりと組み上げられた良演出回だ。くるくると回転する宇宙船(ここの回転がアニメとして見栄えするような演出の”嘘”というのがまたニクい)の中でボルシチのレシピを読み上げるシーンは2021秋クール必見のシーン。打ち上げ成功に喜ぶのもつかの間、大気圏突入からクライマックスまでは息継ぎする暇もないがそこに忙しさはなく、宇宙飛行の緊張を描き切っている。

劇伴がとにかくいい。最終話「新世界へ」のレフくんの告白演説で、レフからイリナへ、イリナからレフへ、動き出すそれぞれの思いを乗せながら流れるジャズは、アーニャのロケット頭突きという衝撃のカットをぶつけられても負けない力強さがあった。

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信じられないことに、これに負けない劇伴が存在する。(12話)

あとEDがめちゃくちゃいい。監督の個人的な思い出から寒い夜を走るサイドカーに乗る二人というイメージが出来上がったようです。イリナからレフくんへ託す視線の温もりと、その先にある星空。最も効果的に回り込みを使ったアニメーションの一つ。

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デジモンアドベンチャー:54話「さすらいの戦鬼リベリモン」(追記2)

作画回です。この回だけ(というと言い過ぎですが)年話候補に挙がったほど突出して出来が良く、それだけに話題に上らないのがちょっと寂しいので紹介します。

よく動かすというより、カッコよく動かす。原画に館直樹、星川信芳、志田直俊など、かっちょいいアクションを知っている作画で力いっぱい暴れるデジモンが観れていいです。序盤の多対一、後半の一対一でアクションの味が変わるのも嬉しい。

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太一とアグモンの絆と、リベリモンの孤独

こういう気の利いた構図が多いのも印象的で、台詞よりも画で語るスタイルもたまらない。

 

トロピカル~ジュ!プリキュア

マジのガチで面白かったアニメはと言われたらこれ。マジで全部おもろい。トロプリがなかったらいま生きてないよ、トロプリ視聴は生存戦略です。

毎話愉快に、みたいな方向性なのかな。私が観てきたいくつかのプリキュア作品と比較するととにかく遊びに溢れていてめちゃくちゃ楽しい。南国=陽気という安直さ(というと失礼かもしれないが)を大真面目に仕立てたその出来はなるほどトロピカっている。それでいてきちんと縦軸のストーリーも編み込まれていて、いわゆる泣き/エモ要素も十分というなんとも美味しい作りだ。何をおいても優先して全部観ておいてよかった……。

いやとにかく女王たらんとするローラ・アポロド―ロス・ヒュギーヌス・ラメールさんがいいキャラすぎるんだよな。2021年主演女優賞はローラさんだよ。俺は気高くて高潔で欲張りなキャラクターが大好き。マーメイドアクアポッドが欲しい。

単話で、となるとやはり作画演出がありえんくらい良い29話がよく挙げられる気がするのであえて他の回を。

第37話はローラとまなつの幼いころの記憶に触れる回だ。一部では猿やなんやと言われているまなつにあんな過去が……というエモ伏線回収が~みたいな話はさておき、伝説の29話では作画監督を担当された森佳祐氏(おそらく?)パートの幼いローラの動きがとにかくいい。

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人魚の経験がないと描けないとまで言わしめるカット

脚を手に入れてから人魚の姿で動き回ることが減ったけど、やっぱり最初の頃の「人魚であることがばれたらマズい!」のドタバタコメディも楽しかった……校内放送にスペシャルゲストとして登場し人魚の美しい歌を披露する13話、保育園の先生として人間の子供たちと触れ合う14話などは特にローラさんが輝いていて好き。

 

パウ・パトロール ザ・ムービー(追記2)

TV版も楽しく観ているんですけど、でもこの「たのしく」はパウパトロールの繰りだすパワフルな描写に否が応でもテンションが上がってしまったところから出てくる感情なんですよ。山の上に氷海があってそこにペンギンが生息していたり、落下する人工衛星を巨大なトランポリンで撥ね返したり。お話もクソ迷惑な住民たちの尻拭いをボランティアでやってる小学生と犬たちが知恵と勇気で頑張るって感じなので素直に気持ちよくなれないこともあり……というのもあってあんまり劇場版の内容に期待はしていなくて、僕がこの映画を観にいった一番の理由は「CGがやたら豪華になってる!」というものでした。

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これが(TV版)

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これになる(ザ・ムービー)

ところがですよ。いざ観にいってみたらあのまじめで、かしこくて、とっても頼りになるチェイスくん(子犬、ジャーマンシェパード)が都会に怯えているんです。そこで「これは大変な映画だぞ」と姿勢を正すと、実はチェイスくんは街で捨てられた子犬で、だから都会が怖いんだといことが明かされる。身が竦んで、レスキューの時も普段の実力が発揮できないでいる彼は、自身のパウパトロールとしての資格を疑い始めます。

主人公ケントの役どころも非常に良く、TV版ではパウフェクトになんでも解決する彼が、チェイスくんのことで一緒に悩んでいて、人間らしさがある。彼らの結びつきをTV版以上に身近に感じることができました。

あと忘れちゃいけないのがタワーからのビーグル発進シーン。あの数分間は確実にアイアンマンを超えた。

 

ぶらどらぶ

狂ったように観た。だって狂ったように放送してたから。

千葉テレビが夏休みアニメスペシャルと称して平日の0時半に『ぶらどらぶ』を放送、しかも1周するだけに止まらず4周する(TOKYO MXでの1クール+一挙放送を含めれば6周することになる)というのだから正気の沙汰ではなかった。某武士道社が某バンドアニメを狂ったように再放送している様を冷ややかに見ている僕も、ここまで狂ったことをされてしまうと負けを認めざるを得ない。

ぶらどらぶはそもそも2021年アニメではない(2021年冬配信開始、1話のみ2020年12月先行配信でした)。夏のTV放送が始まるまでに1話から6話まではすでに観ていたし、1話に至っては本放送が始まるまでにYouTubeでの1話先行配信やら何やらで8回くらい観てしまった。配信で観ていた時よりものめり込んでいることを考えるとぶらどらぶはTV放送が最も適していたということは間違いなくて、上にも書いたようにとにかく狂ったように観たものだから2021年のアニメ生活を思い出すうえで外せない一作になってしまった。

あとOPがバチバチに良い。


www.youtube.com

ウ~ンよすぎるOPだ……多分最近では一番再生したOPだった気がする。

 

ぶらどらぶは「渇き」が良く演出されたアニメだった。セルフパロに飽き足らず映画のうんちくまで語ってしまうのも他作品の血で生きる吸血鬼……ということなのだろうか。うる星やつらのような古くさいノリもリビングデッドという側面を象徴するかのようだ。とにかく監督が好き放題バカバカしいことをやるというのが好感触だったし、僕に8周させるほどの渇きを覚えさせたのも事実だ。

好きな回はまず2話「愛の夜間飛行」。べろべろに酔っぱらったマイの血ぃがS.O.S歌唱からメリーポピンズ(おれはメリーポピンズが大好き)よろしく蝙蝠傘で優雅にそして豪勢に夜間飛行するシーンがお気に入り。

6話「悪魔の城ドラキュラ」は作画的な見所に溢れていて楽しい回だ。蜷川姓を襲名した仁子が度を越した熱でズバズバ突っ込んでいく練習パートはぶらどらぶの思い出を語るうえでは外せない。

そしてやはり12話「インタビュー・ウィズ・マイ」。これまでのバカバカしい遊びがここまで美しく畳めるのだという部分に押井守のすごさを思ってしまうね。これまで多用してきた小窓ワイプの使い方など演出的にも光る部分が多い。あと血ぃがS.O.Sで〆るのがニクい。早く音源を出して下さいってずっと言ってるけどなかなか出ないな、なんで?

 

BLUE REFLECTION RAY/澪

1期OPが好き過ぎる!

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このキャラ原案岸田メル岸田メル感を多分に残した画面にビビってたら、現実の社会問題を交え苦悩する少女たちを鮮やかすぎるほど鮮やかに描きだしたので完全に参ってしまった。自分がしっかり向き合えているかどうかは分からないけど、2021年を象徴するTVアニメの一作だったと思う。

いろいろな悪いインターネット描写に触れてきた一年だったから、五話「何も見えないわたし」は折に触れて思い出してしまう。あまりにもインターネットは悪!で終わってしまう作品が多すぎる。それを踏まえて何ができるのだろうということまで考えるべきだろ、2021年だぞ。という思いにしっかり答えてくれた素晴らしい回だった。これ観なければ竜そばを観てインターネットに絶望したままだったかもしれない。アニメは全部観た方がいい。

 

POKÉTOON「ゲンガーになっちゃった!?」

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スタジオコロリド、いま一番今後が楽しみなスタジオなんだよな。

ここが作るポケモンのショートアニメはどれも良い。「ゲンガーになっちゃった!?」は渡辺暁子のキャラデザがまず良くて、モチモチ動く小学生やゴーストタイプのポケモンたちはどこをとってもかわいい。加えて背景美術、3Dの質感とも噛み合っていて、自身の強みを完全に分かった映像を作っている……と圧倒されてしまった。

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かわいい

 

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人間もかわいい(井口裕香、偉大!)

CMやらショートアニメやらとまだ短いものが多いけど、ペンギン・ハイウェイも良かったし長編オリジナルで一発かまして欲しい。2022年には「雨を告げる漂流団地」が配信/公開予定なのでとっても楽しみ。

 

あと、ポケモンのショートアニメではこれもびっくりした。

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脚本、北野勇作

かわいくて愉快な世界で、読んだ時の音も良い文章を書く方なのでアニメ向きではあるんだけど、実際観てみるとかなり良かったからもっと欲しくなっちゃった。

どろんころんども実はアニメーションになってる。

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監督の小林治さんが亡くなられたのが去年だった。

 

「魔法の歌」PEOPLE 1

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2021年で一番良かったアニメMV。最近気づいたんだけど多分俺長回しにめちゃくちゃ弱い。映っているのは主人公ひとり、背景は水色1色、そこに歌詞が入ったりするというシンプルな映像。

拾う動きとカメラの選択がいいのは勿論なんだけど、感情の決壊寸前の表現、主線に変化つけて感情乗せてるところもすごい。

 

女神寮の寮母くん。(追記)

2021年で一番「アニメ全部観る」をやっておいて良かったと実感したくらい視聴前との差が大きかったアニメ。選んで観てたら1話も観ずに切っちゃっていたと思う。

OPがいいんだけどYouTubeには公式コスプレイヤー(??)のMVしかない。曲がいいからいいんだけどさ……。

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貧乏中学生の南雲孝士君が火事で家を失ってさまよっていたところ大学の女子寮に拾われ、寮母として働きながら美人女子大生とのお色気たっぷり同居生活を送るという内容。視聴前の印象ではどう考えてもインスタントな量産型お色気アニメ、俺が楽しんでみるものではない……のだけど、画面がとても上手く練られていて面白かった。

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キャラクター達が各々の反応を見せ、各々のタイミングで立つ(2話)

えっちなシーンというのはそれだけでパワーがあるのだけど、女神寮はそのエッチさに甘えず「同居生活」をこういう芝居レベルで描いていて非常に好感が持てた。画面外のことを考えた設計があり、それが分かりやすく伝わるよう作られている。

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個人が集まっての同居生活。部屋や扉の使い方が上手い。(10話)

ちゃんとエッチなシーンはエッチだし、女子大生たちも(モブを含めて)個性的で狂ったキャラクター達ばかりそろっていたのもものすごく楽しかったアニメだ。

 

やくならマグカップも(追記2)

30分のうち前半15分がアニメパート、後半が実写声優バラエティパートという構成に放送初期までは構えていたところがあったんですが、一期後半がらグングン良くなってって、一期最終回などは今年一番良かったTVアニメです。一番いいアニメはいくつあってもいいですからね。

舞台は美濃焼で有名な岐阜県多治見市。陶芸に夢中な4人の女子高生たちが、土をこねながら自分たちそれぞれの形を見つけ、少しずつ成長していく「ゆるふわ陶芸ストーリー」。まちを挙げての全面的な協力もあって土地に根付いている物語、キャラクターを感じることが出来る、”生きたアニメ”になっていると感じました。

やくも、「時間に対する感覚」が異常に良かったです。季節や時間帯といった"いつ"の表現もそうなんですけど、キャラクターの運動そのものに流れている時間の描写が特に上手い。彼女たちがそこに存在しているという説得力と、相互に響き合っているその瞬間を確かに切り取ることができる感性。

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姫乃ちゃんが四つん這いになって上手から下手へ移動するここに、15分のうちの10秒も割く。

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夕日の中縁石の上を歩く2人。下校時間そのものを画面に持ってきている。

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曇った窓ガラスと車内の明かりの色味で冬の細かいニュアンスまで描写

フィルムに流れてる豊かな時間を感じられるとキャラクターの変化や成長も鮮明になるし、回を経るごとに積み重ねてきた時間が乗っかってくるので強いですね。

 

遊戯王SEVENS

ずっとやってるから2021年のアニメでもないけど、ちゃんと2021年も面白かったので描いておく。なんでこれ(観測範囲内で)視聴者が少ないんだろう……と毎週思ってしまうくらい面白い。トンチキアニメの部類に入ると思うけど、たまに入れ込んでくるSFっぽい遊びにも存在感があってよい。

52話『最後のラッシュデュエル』は第一部最終回なのだが、子供たちがラッシュデュエルという遊びを守るために月に巨大ロボを建造する、なんていうエモいSFがやりそうなことをやっていてエモい。

「子供たちが自分たちのルールで、自分たちの世界を作って遊ぶ」ということを少年向けアニメでやるということの偉大さをもっと分かってほしい。それでいてしっかり面白いのだから完璧なんよ。アニメ全部観た方がいいよ。

このアニメの好ましい部分の一つなんですが、一発ネタで雑に作ったように見えるキャラクターがその後も割と頻繁に活躍の場が与えられ、しっかりその後も生きていると思わせてくれます。見た目は子供だけどばりばりの主婦というノリで生まれたとしか思えない足立ミミはほぼ準レギュラーとしての地位を獲得していて、現在は主人公たち小学生の作る未来を同じ目線の高さで見守るという唯一無二の味わいを持ったキャラクターになっている。

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左から小学生、小学生、小学生、そして本厄37歳を数える一児の母足立ミミ

 

「Unison」hololive/宝鐘マリン(追記2)

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歌うVが増えてきている+アニメMVが増えてきているという流れがあってのVtuberのアニメMV。すでに珍しいものではなくて、特にホロライブはその企業力でヤバPVを作ったりしている。

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監督コンテ演出榎戸駿のオルタナティブPV、あの超大型コンテンツFG〇レベルなんよね。パワー。

でも取り上げるのは船長のMVです。時代を象徴しているのはこちらのような気がするから……。

 

船長が画面に映ってない時間が1秒以上あると放送事故だとでも言わんばかりにずっと船長を映している、とにかく宝鐘マリンに溢れた4分間。少ない素材を切って貼ってとやってるわけですが、その素材の1個1個が船長好きによる船長好きのための愛によって作られているのでなかなか狂気的な仕上がりになっていて、「配信者」という性格がコンテンツに表れている気がする。ちょっと電波感のある不思議な曲なのも良い(歌詞の「ねっちゅう(熱中)して」のとことか、正気ではない)。

もう既にindie_animeのタグで調べるとウマくてエモいアニメーションが無限に出てくるような時代になっており、これからこういう「好き」で作られたアニメが個人レベルでドシドシ作られて、ドシドシ増えてくんだろうな~と思うと結構楽しい気持ちになりました。

 

終わりに

とりあえず一区切りしました。思い出したら追記するかもしれません。

 

ちなみに2021年TVアニメ10選+劇場アニメ3選です。

2021年といったら、みたいな基準で選んだはず。モルカーを入れたかった。

TVアニメ

  • かげきしょうじょ 
  • ゲキドル 
  • 装甲娘戦機 
  • 月とライカと吸血姫 
  • トロプリ 
  • ぶらどらぶ 
  • ブルリフ 
  • メイドラゴンS 
  • やくらならマグカップも 
  • RE-MAIN

劇場アニメ

FGO六章は強いアニメーターに鯖対鯖の各パート振ってそれぞれ強い映像をやってもらうっていうやり方が2021年らしいしシンプルで強いなと思ったので選んだけど、一本の作品として強かった『サイダーのように言葉が湧き上がる』『漁港の肉子ちゃん』『アイの歌声を聴かせて』のどれかに変わるかもしれない、くらい強かった。

とくに何かを悟ることなく終わったはずなのに

当時ポケ虹を観た人がTV版と全然違うっていって非常に困惑していたらしい。本当にそうだね。

ポケ虹は、TV版の世界を観てしまった並行世界の偽ホランドたちが「あれこそが正史」「私たちが生きるべき世界」として移住を目指し、対してレントンエウレカ達は自分たちの世界を神話を作るべきと反抗するという話で、TV版の映像を再編集したり、新しく声を入れたりという手法で「神話の再現」を表現していたりします。総集編なのかなと観に行ってみれば、同じ映像同じキャラなのに別のお話が展開されているとなると「なんじゃこれ」となるのも仕方ない気がしますね。

ここで私が面白いと思ったのは、この2つの作品に「正史と、そこから分岐した世界と」という力関係が存在していないことです。1246秒を50話使って作り上げてきたものと、そこから素材引っ張ってきて編集して一部を作ったものとが、です。こういうことを、交響詩篇エウレカセブンはずっと続けてきたのだと思います。

そんなことを許してしまうから、ANEMONEでスカブコーラルが氾濫し、生存圏を追われた人類は少女の魂を死地に送り、彼女にゴミ処理をさせることになるのです。

 

でもそれでいい。その優しさがいいんです。終わるに値する世界など存在しないのだから……。

 

そんな優しさの詰まった快作『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』の感想です。例によってガンガンネタバレしていきます。よろしくお願いします。

eurekaseven.jp

 

正直、めちゃくちゃいい映画というわけではなかったと思います。

作画は万全とはいえず、ハイクオリティなシーンは要所要所ではあるものの中盤から終盤にかけて崩れているところが目立ちました。ラブレスの合体シークエンスはいいとして、ラスト重要なシーンであるはずの特攻も笑う他なく、どのような気持ちで観ればよいのだろうと悩みます。音楽は? 私はもろもろ納得した2回目ですらあのEDでアガることができず(歌詞はなるほどな、という感じでしたが)、満足できないまま映画館から出る羽目になりました。

なにより私が一番観たかったANEMONEのその後の世界の話、受肉した虚構のその後については期待以上のものは出てきませんでした。

なにか世界の仕組みのような巨大なものを感じ取ること、悟りに似たような心の動き、がなかった……はずだったんですけどね。

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帰ってTVアニメを実況していたら流れてくるEUREKAのCMを観るたびにゾワゾワ感じてしまう身体になっていました。なぜ? 俺は何を手に入れてしまったんだろう……。

 

虚構と現実が入り混じった後の世界

ANEMONEで一通り完結していたということは監督も話していて、それは自分がANEMONEのエンディングをみたときに感じた満足感の理由でもあるのですが、そうなると虚構と現実でガチャガチャする話はANEMONEですでに終わっていたのでは? という話になってきます。

だからこそ、EUREKAでは何を見せてくれるのだろうという期待がありました。

しかしもはや現実におりてきた虚構というのは現実でしかなく、現実世界と虚構世界の衝突もデモという私たちの現実に存在するものとしてしか発生していません。デューイたちの「被造物たる我々に意志というものは存在するのか?」という恐怖も、私たちの現実に存在しないわけでもない。

では虚構としてのEUREKAはどうやって成り立っているのかを考えてみると、それ自体がアニメであることによって成り立っているし、また作中で展開される他作品のパロディによって成り立っているのではないか、ということを思いました。

前者は洋画のような雰囲気を醸し出しつつ、かと思えば深夜アニメのような節操のなさでものすごくアニメチックな芝居に切り替えたり。後者は溶鉱炉に沈むデューイやラブレス合体、ラストのバカでかいハート(あれ何がどうなって解決したんですか?)などのウソみたいな景色によって。

でもまあ、そういうことって他のアニメもやってるんですよね。

 

ひたすらに”本物”を描くということ

虚構対現実の衝突を浴びたい……という期待を裏切られたのに、どうしてここまで刺さっているのだろうというのは少し疑問でした。

確かに画的に楽しいシーンはたくさんありました。特に冒頭、公開された15分程度の戦闘シーンをスクリーンで観たときには既に全身が泡立つほど興奮しており、「お前は予告を観るたびにその熱を思い出しているのだ」と言われれば、まあそういう部分もあるでしょうが、この映画で一番きもちよかったのはそこではない。あの現実と虚構の融和したときの気持ちよさは、一体どこからきたのだろう。

 

EUREKAが成した最も偉大なこと、それはエウレカというキャラクターの”本物”をガシガシ描き出してくれたことだと思います。

「機械人形にすぎない私たちが持っているこの気持ちは本物なのか」

雪月花のブローチが示唆する、EUREKA世界すらも虚構であるという可能性。そこに生きるエウレカも台本に従うほかない機械人形であり、そして事実、EUREKAという映画の登場人物です。ならば彼女がアイリスを大事に思う気持ちも、アネモネに言った「大好き」という言葉も、製作者の意図によって作られた嘘に過ぎなかったのか。

もちろん、そうではあり得なかった。エウレカという本物の人間の質感がスクリーンにはありました。

 

AOでは母としてのエウレカが登場しましたが、それとはまた違った年の取り方をしたエウレカが本作の主人公でした。

それが「酒を飲むか、筋トレしかしない、ガタイのいい兵士エウレカ」です。

世界をメチャクチャにしてしまったその贖罪に10年を費やし、身体にも心にも多くの傷を負ったエウレカ。非常にセクシーでしたね。アイリスとのロードムービーで見せる保護者のような姿も、母というよりは母ちゃんという感じで、地に足のついたものでした。

本作の洋画でバリバリアクションをこなすヒロインのような彼女は、今までになかったエウレカ像ではあったものの、その根っこにはしっかりと”エウレカ”という少女が存在していました。

風呂でのアイリスとの会話、アイリスが連れ去られた時の叫び、「アネモネちゃん」の呼び方、そしてレントンを求めたあの瞬間、スクリーン上で本物の感情を持った本物の人間としてのエウレカを通って、過去のエウレカシリーズにいた彼女を思い出す。

つまり、アニメキャラとしてのエウレカをひたすらに”本物”として描写したことで、私たちの感じる現実を通して、虚構を実感させることができたのではないか。

そしてこの実感こそが、自分を刺激する何かなのではないのだろうか。

という結論に、3回観た後でようやく落ち着きました。4,000円分の価値はあった。

 

名塚佳織さんが偉大過ぎる

エウレカシリーズとずっと向き合ってきた京田監督のエウレカ像、素晴らしかったです。「酒を飲むか、筋トレしかしない、ガタイのいい兵士エウレカ」を描けるのは、そしてそれをエウレカとして成立させることができるのは京田監督を置いて他にいないでしょう。アニメは脚本が命ですよ。

アイリス、アネモネなど、エウレカと大きくかかわるキャラクターたちの造形も非常に良かった。前作で世界の破壊者「魔女エウレカ」を許し、現実世界にまで引っ張ってきたアネモネちゃんが激ヤバ感情をぶちまけてくれたあのシーンは勿論、序盤のミーティングにエウレカを呼びに行くところの仲のいい同僚ですよ~みたいな雰囲気が凄い良かった。アイリスは次世代のエウレカとして「少女の始まり。」を担う大役でしたが、こちらもまた見事に演じ切ってくれましたね。愛を受け育ったものの、「力があるから拾ってもらえた」というドライな見方もしている。しかしその力は人を傷つけてしまうかもしれないもので……という微妙な天秤の振れ方がビンビン伝わりましたし、それよりなによりあのエウレカの母ちゃん芝居を引き出してくれたことが本当にありがたい。ありがとうございます。アニメは魅力的なキャラなしでは成り立たない。

最後に、これが一番言いたかったことなんですが、エウレカをずっと演じ続けた名塚佳織さんが偉大過ぎました。

パラレルな世界、しかもそれぞれが独立して存在するような過去シリーズでもエウレカという少女の微妙な差を演じ分けてきた名塚さんですが、本作ではさらに難しいエウレカを演じていたと思います。というか、上に書いたやつのほとんど全部が名塚佳織さんなしでは成り立たなかっただろとすら思う。

年をとったエウレカの、ANEMONE以後の10年を思わせる声。唯一心を許していたアネモネちゃんとの距離感。保護者として、そしてエウレカの先輩としてのアイリスへの目線。そしてやっぱり、レントンに恋する女の子としてのエウレカ。これらすべてを”本物”として成立させていたのは、これはもう名塚佳織さんパワーですよ。すべてのアニメは名塚さんを起用すべき。

 

少女の終わり。少女の始まり。

この一言にすべてを込めた映画でした。ANEMONEでやりたいことをやりきった監督のケジメとして、エウレカという少女の終わりまで描き切ること。そして次世代のエウレカに託すということ。多少不格好でも、京田監督はまっすぐやり切ってくれたと思います。監督のそのフィクションに対する真摯さに感謝……。

結局満足するまでに3回かかってしまいましたし、今もまだ予告を観てはズクズクと疼く感じが残っていますが、なんとなくではありますが「始まり。」を得た、ような感触があります。

俺もエウレカなのかもしれん。めちゃめちゃハッピーなスカブつくって世界を平和にしたいと思います。

 

他、めっちゃ好きなシーンとか

・ラスト、破壊するために建造されたメチャヤバ巨大軌道エレベーター。タイトルが出るところで初めて映るけど、スケールがアホすぎてフォントの一部かと思ってしまった。直下の国は助からんだろう……。

・鋼鉄の魔女初お披露目。アクションがいいのは言わずもがな、飛行機内部にエウレカが侵入するときANEMONEのキービジュの構図になるとことエモ過ぎる。

ホランドの小物感。デューイもデューイだしあの兄弟はかなりウケる。

ウルスラグナでキリニャガ基地を脱出するところ。細かい姿勢制御とか、アツい。

・「動画ばかりみているとバカになるわよ!」

・「うるさいわね」「うるさいわね」×5のとこでほっこりせんやつおらん。

・「お願いウルスラグナ、私をアイリスのところにつれてって!」に答えるかのようにディスプレイに表示される『GO』の文字。正直ニルヴァーシュの覚醒より興奮した。

・ヤバい思想のテロリスト集団がLINEっぽいやつでフランクにやり取りしてるところ。